第弐拾参話「風柱の心情は」 ページ31
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「お帰り、私の
あれから、俺たちはお館様の元へと戻った。腕には、しっかり小さな彼女を抱えている。
「Aは……間に合わなかったか」
「……何を言っているんですか、お館様」
俺達の空気を察して、お館様の目が悲しそうに伏せられる。その仕草に、少し離れた場所から苛立った声をあげた者がいた。
「間に合わなかった?そんなわけないじゃないですか……胡蝶さん、早く蝶屋敷に連れてかないと!!」
時透だった。柱といっても、まだ十四かそこらの子供。死というものを上手く理解出来ないのか、そう思って低い声で咎めた。
「オイ、時透黙れ。Aはもう……」
「なんで、そんな簡単に諦めるのさ?!Aが死ぬわけないじゃん!!」
「いい加減にしろやァ!!」
(俺だって、諦めた訳じゃねェ。コイツが死ぬなんてそんなこと有り得るわけねェ。それでも、)
それでも、触れた身体からは体温が失われていくのだ。どれだけ強く抱き締めても、彼女の身体は冷たい。
苛立ちで、つい大きな声で怒鳴ってから気づいた。普段、表情を変えない時透の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていたのだ。
言葉が詰まる。何事にも、無頓着な奴だった。俺の名前も、どれだけ忘れられたか。でも、そう言えばコイツは
「約束、したんだ……っ今日は、だって、」
Aの名前だけは忘れたことがなかった。Aから教えられた事は、必ず覚えていたのだ。
「時透、落ち着くのだ……不死川も」
悲鳴嶼さんが止めに入ってくれて、俺も黙って腰を下ろした。
「すまない、無一郎……これは、私の失態だ。私がもっと早く君達を呼んでいれば、あの子を止めていれば、防げた筈なんだ」
「?!お舘様、辞めてください!!」
胡蝶が慌てたように立ち上がる。目の前では俺達の長が、頭を下げた。頭が混乱する。何故、お館様の失態になるのか。Aは鬼に襲われたわけではないのか。
「全てを話そう、彼女のこれまでの人生の話を」
お館様が語られたのは、暖かくて明るい彼女からは考えられない真っ暗な過去の話。
__『大事にしたい物ほど、呆気なく壊れてしまうものですから』
頭の中からあの時の悲しげな顔が離れてくれなかった。今なら、全て合点がいく。ーー本当に、テメェは
「……わかりづれェんだよ、クソっ」
(嫌ってくらい、文句言ってやるからさっさと目ェ覚ませや……なァ、馬鹿A)
第弐拾肆話「恋柱の願い」→←第弐拾弐話『いつか夢見た夜明け』
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時