第弐拾壱話「絶望に染まる花」 ページ29
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夜も更けた頃、鎹鴉が私の元へ飛んできた。いつも淡々と命令を告げる、鴉の様子が切羽詰まっているようだった。
「オ館様カラノ伝言!!四橙Aガ危険!!タダチ二彼女ノ元へ向カエェ!!」
鴉の口から告げられた命令に耳を疑った。非番を取っていたはずのAが何故、危険におかされているのか。
「カナヲ!!」
「師範……!」
「どうやら、柱全員にお館様が鴉を飛ばしているようです」
まだ、頭が追いつかない私の手を師範が引いてくれる。
「大丈夫ですよ、カナヲ。どうせ、あの人のことだからまた無茶をしたんでしょう」
師範は笑っているが私は何も返せない。
(だって師範の手、震えてる……顔色も、悪い)
柱が集まっている場所には、炭治郎や伊之助までいた。皆、Aと仲の良い人達ばかり。
「Aの所へ向かえって……アイツの居場所、わかるやついるか?」
音柱さんが私達を見渡して、そう聞いてくるが誰一人心当たりがない。気持ちばかりが焦って、嫌な空気が流れた瞬間
「カァー!!」
黒い、一羽の鴉が目の前に降り立った。それは、あの子の鴉だ。鴉は私達をぐるりと見渡すと、再度飛び立つ。
「む、案内してくれるのか!!」
炎柱さんの言うように、鴉の行動は私達に着いてこいと言っているもの。皆、一斉に走り出し鴉を追った。大切なあの子の、元へ向かう為。
*
暫く走り、山も超えた。本当に、本部から遠く離れたこんな場所にAがいるのか。少し不安な気持ちを抱えたまま走り続ける。
「Aの匂いがします!!近くにいます!」
「炭治郎!!Aの心臓の音……段々弱くなってるよォ!!」
耳と鼻が効く炭治郎と善逸の言葉に、全員に緊張がはしった。早く見つけなければと、皆懸命にAの名前を呼ぶ。
その時、凄まじい爆発音の様なものが闇に轟いた。音の聞こえた方に走れば、炎があがっている。私は、人よりも目が良いから見えてしまった。煙の中にいるあの子の姿が。
「A!!」
自分がこんなにも大きな声を出せたのが驚きだった。私の隣にいた、甘露寺さんが泣きそうな声で名前を呼ぶ。
どうして。いつもなら、私が名前を呼べば嬉しそうに笑ってくれるのに。Aは倒れたまま。震える足で近づけば、Aの周りには血溜まりが出来ていた。
「おい、胡蝶!!早く止血を!」
「わかってます!!」
蛇柱さんと師範の焦った声が遠い。触れたAの手はゾッとする程、冷たくて私はただ立ちすくむしか無かった。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時