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第弐拾話『憎悪に塗れた華』 ページ27

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目を閉じる。混み上がってくる嫌悪感と、憎悪に身を任せ息を深く吸い込む。

__罪の呼吸 参ノ型 金盞花

私が斬りかかると、鬼は腕で防いだ。鬼の腕に大きな切り傷が入った瞬間、赤い炎があがる。炎は鬼の腕を焼き、やがて右腕が落ちた。


「っ、クッソ!!うぜェ、炎だなァ」


この炎は先程の技とは違う。参ノ型は、あの人らしくない技だった。使う人間が強い負の感情を宿している程、炎は燃え上がるのだ。

人を愛し、時には悲しくなる程優しいあの人には似合わない技。けれど、


『そのまま、焼かれろ……!!』


私には、酷くお似合いだ。私の憎悪は何処までも深く、暗い。真っ黒で汚れた感情を持っている私だからこそ、使えるのだ。

何とか防いでいた鬼も再生が間に合わないと気づいたのか、苦しげな顔を浮かべた。ーー殺せる!!次の一撃で、


「A」

『!!ぇ、なん、で』


頸を狙った瞬間、大好きなあの声が、師匠の声が、鼓膜を揺らした。思わず立ち止まった私の身体に、激痛がはしる。

まだ思考が追いつかず、目だけを動かしてみれば腹には鬼の腕。目の前の鬼の口は弧を描いている。


『ぐ、血鬼術……!!』

「ご名答。俺は、喰らった人間の声を真似出来んだよ」


鬼は、師匠の声で喋り続ける。

男の人にしては、少し高いその声が好きだった。月明かりに照らされた化け物の顔と、師匠の顔が重なる。


「可哀想になァ……この四年、俺を殺す為に頑張ってきたんだろうなァ。残念だったなァ!!」


貫かれた腹から、生暖かい液体が溢れてくる。何とか、呼吸で止血をしようとしたが血を流し過ぎたのか視界が霞む。

(煩い、煩い!!こんな奴に……!!)


「オマエじゃ、オレを殺せない」


目の前が真っ暗になる。深い海に突き落とされたような息苦しさに、唇を噛み締めた。

その時、ふと横で白い花弁が舞った。目に入ったのは、いつか義勇さんとみた夕顔。此処にまで、咲いているなんて皮肉にも程がある。

義勇さんに私のようだと言われた時、血の気が引いた。でも、今考えれば動揺することはなかったのだ。

(私にぴったりだ……だって、夕顔の花言葉は"罪"なんだから)

夜闇に浮かぶ白い花は、罪の証。必死に真っ白なフリをしたって、無駄なのだ。


「もういいや、喰っちまうかァ」


その根は、黒く染まっているのだから。

鬼の手が、私の顎を掴みあげる。鬼の目に映った私の瞳は、暗かった。

◇→←第拾玖話『罪状』



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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時

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