◇ ページ20
＊＊
私の言葉に少女は戸惑った声をあげる。真実はわからない。でも、葵が身を呈して守ったものを簡単に死なすことは、
「その命を投げ出すことは、死んだ彼への冒涜だ」
『……でも、そんなの、許されるわけ』
いつかの葵との会話を思い出した。そう言えば。
「君の名前は？」
『……四橙、A』
その名前に、笑みが零れる。彼が、嬉しそうに語っていた子じゃないか。
__「俺と今一緒に住んでる奴……Aって言うんですけど、全然笑わないんですよ！でも、この前やっと笑ったんです。その笑顔が可愛くって、太陽って言葉が似合うんです！本当に」
愛おしそうに語る彼に、今度その子を見せて欲しいと頼んでいた。こんな出会い方になるとは思わなかったが。
「いい名前だ。葵は、君を大切にしていた。本当に我が子のように、妹のように、愛していた。それでも、君は死を願うのかい？」
『……でも、私、これからどうやって、生きたら、』
「だったら、」
不安に染まった声に私は緩く笑う。彼は柱という階級は望まなかった。その変わり、
__「お館様、お願いがあります。もし、俺が死んだらあいつを鬼殺隊に迎え入れてやってください」
「鬼殺隊に入りなさい、A」
彼は、この少女が独りにならないことを望んだ。それは、人を愛した彼らしい願い。
私が今できるのは、少女がいつか葵が愛した笑顔を浮かべて幸せに暮らせるよう願い見守ることだと思うから。
＊
「明日は君の誕生日だね」
『正確に言えば、師匠が私を拾った日なんですけどね』
葵がAの誕生日と決めた日は命日になったのだから、些か複雑そうだ。
『改めて、感謝申し上げます。あの時、お館様とあまね様に拾って貰わなければ私はここにいませんでした』
「君がこの4年、立派に成長してくれただけで私は充分だよ」
当時に比べ、今は表情豊かになり、明るく笑えるようになったことに心の底から安堵する。
「A、葵が亡くなって随分経つ。そろそろ自分を許しても良いんじゃないかな？」
それでもまだ気にかかるのは、彼女が自身を許していないから。自分の命を軽く見る彼女の言動はここに原因がある。
『申し訳ありません、お館様。私は私を許すことだけは出来ないのです』
「わかっているよ。でも、私も皆も心配なんだ。私達を安心させる為だと思って、柱になってくれないかい？」
私の言葉がやけに大きく響いた。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (
レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして！お話面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです！夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ！完結おめでとうございます！！とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました（笑）今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこもち | 作成日時：2020年3月18日 17時
