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その後、彼女は柱ではないと知った。それでも、階級でいえば乙。強いのは変わりない。
そんな人が戦うことも、血を見ることも嫌いだなんて。彼女のことを気になり始めたのはその話をしてすぐの事だった。
俺は彼女を見かける度、何度も話しかけ続けた。遂には、
『あ、炭治郎!!あそこの甘味処、寄ってかない?』
知りたいという欲求はいつしか、恋情に変わっていた。今思えば、会った時から何処か惹かれていたのかもしれない。
俺の少し前を歩いていたAが振り返り、笑った。その笑顔に、トクンと僅かに心臓が跳ねる。
「あぁ、そうだな」
『やった!炭治郎、何食べる?』
(あぁ、やっぱり好きだ)
星を埋め込んだように輝く黒い瞳も、よく笑う口も、明るい声も、その陽の光のような匂いも全部……愛しくなる。
「Aはどうして鬼殺隊になったんだ?」
3人で並んでお団子を食べているとふと疑問に思ったことを口にした。戦いも、血も、嫌いならどうして彼女はこんな場所にいるのか。
ただ、純粋に彼女をもっと知りたいと思って出た言葉。
『どうしたの?急に』
彼女はそんな俺の思いに気づく様子もなく、んー。と少し悩んでから目を伏せた。
『探し物を見つけるため、かな』
「探し物?」
思ってもいなかった返答に少し驚いてしまう。そしてつい、どんな?と聞いてしまった。
『大嫌いで憎くてたまらないもの』
息が止まった。Aが遠くを見つめた後、俺と目を合わせる。合わせた瞳は、いつもの輝きがない。
何よりも、香ってくる匂いは驚く程憎しみに溢れていた。彼女からこんな匂いを嗅いだことは1度もない。
しかし、それも一瞬のこと。瞬きした隙に、彼女の表情は笑顔に変わり匂いはいつもの暖かいものに変わっている。
「俺も手伝おうか?」
君にそんな顔をさせるものの正体を知りたかった。俺の言葉にAは直ぐに首を横に振る。どうして、と聞く前にいつの間にか最後の1つになっていた団子を頬張っていた。
『さ、帰ろっか』
その声は、もう聞かないでと言われているようで俺は出てきた言葉を飲み込む。
「何かあったら、頼ってくれ。俺が助けるから!」
変わりに出てきた言葉に、君は驚いた顔をした後また笑う。
『炭治郎は優しいね』
「そんなことないよ」
後に俺はこの時君が何も言わなかった理由を、探し物の意味を、もっとちゃんと聞かなかったことを酷く後悔することになった。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時