第壱話「水と少女と」 ページ1
＊＊
鬼が出る度、誰かが悲しみ誰かが絶望する。
わかっていても救えない命に、酷く辛くなってしまう。
今回の鬼は、俺が到着する前に2人も喰っていた。女の人と、小さな男の子。幸せも2人の未来も簡単に奪われたのだ。
「んーっ！」
「……あぁ、禰豆子。ごめんな」
鬼の消えた跡を眺めていると、隣で禰豆子が俺を見ていた。ぼんやりしてしまったみたいだ。心配そうな禰豆子に笑いかけて、藤の家まで戻ろうとした時、
『おーい、炭治郎！』
明るい声が聞こえた。それと同時に、陽の光をめいっぱい浴びたような暖かい匂いが鼻を擽る。大好きな声と、大好きな匂いの持ち主に禰豆子がすぐさま駆け寄っていく。
勿論、俺自身も自然と口角があがったのがわかる。
「A！どうしたんだ？」
『炭治郎達が近くにいるって鴉から聞いて、来ちゃった』
禰豆子の頭を撫でながら、目の前の彼女はその太陽のような匂いにぴったりの笑顔を浮かべた。
彼女、
__________
「A、君の意見が聞きたいな」
柱……特に、不死川さんに反対されていた時お
館様が不意に名前を呼んだ。呼ばれた相手は、俺達の少し後ろにいた。
そこに人がいることに気づかなかった俺は、凄く驚いたのを覚えている。
(この子も柱、なのか？)
白く、華奢な体は触れたら壊れてしまいそうな雰囲気を醸し出している。微かに香った匂いは、暖かかった。
『そこの子が言っていることが本当であれば、認めてもいいかと』
「だが、A。これからもその鬼が人を襲わないとは証明出来ないぞ？」
『そうですね、宇隨さん。でも、罪を犯していない者を斬ることは私には出来ません』
綺麗だと思った。他の柱の視線に臆することのないその彼女の瞳が。
彼女の言葉にお館様は勿論、柱の人達の空気が一瞬和らぐ。たった一言で、空気を変えてしまう彼女は相当強いのだろう。
けれど、その考えは蝶屋敷で二度目の再会を果たした時に少し変わることとなる。
「あの！どうしてあの時、庇ってくれたんだ？」
顔も合わせたことのない俺と禰豆子を庇った理由を聞きたかった。すれ違ったその背中に気づけば、声をかけていた。
『あんまり好きじゃないんだ、殺すとか血とか』
そう言って笑った彼女からは、あの暖かさと共にほんの少し悲しみの匂いがした。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (
レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして！お話面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです！夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ！完結おめでとうございます！！とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました（笑）今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこもち | 作成日時：2020年3月18日 17時
