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いつもなら引かれるか、冷たい顔で拒否されるかのどっちか。なのに、目の前の少女はどちらとも違う反応。
驚きで言葉が出ない俺に不思議そうな顔をしていた。
「あが、我妻っ、善逸!」
しどろもどろで情けない声。俺のたどたどしい自己紹介にも気にせず、目の前の少女はまた可愛らしく笑う。
『素敵な名前だね!結婚は無理だけど友達にならない?』
君の音は、嘘をついていなくて俺は喜びと恥ずかしさが込み上げてくる。
差し出された手は白くて、俺のよりも小さい。優しい言葉と可愛い子を目の前にしてわけも分からず、俺はその手をぎゅっと握る。
『私は四橙A。よろしくね、善逸!』
俺はこの時の笑顔を今でも忘れられない。
『善逸?』
出会いを思い出していると、その本人に名前を呼ばれ意識を戻された。君はまだ、嬉しそうに俺があげた髪飾りに触れている。
「気に入ってくれた?」
『うん!だって、』
初めて会った時は、落ち着いた子だと思った。階級も俺よりも全然上で、柱の人達に臆することなく話していたから。
でも、くるくる変わる表情も甘い物が好きなところも年頃の少女そのもの。そんな所が、また可愛いのだけれど。やっぱり、
『だって、善逸と同じ色だから』
この笑顔が1番好きだ。丸く大きい瞳をめいっぱい細めたその顔が何よりも、誰よりも、愛しい。
不意に、彼女の細く白い指が俺の髪に触れた。心臓が壊れるんじゃないかという程、痛くなるがそれが心地いい。
「俺の髪と同じだと嬉しいの?」
『もちろん!だって、善逸の髪の毛綺麗じゃない。太陽みたい』
キラキラした眼差しを向けられる。目立つし、何か言われるこの髪色が俺は好きじゃなかった。でも。笑っちゃうくらい俺は単純だから、
「俺はAちゃんの方が太陽だと思う!!」
君がそう言ってくれるのならこの髪色も、こんな自分も、好きになれるんだ。
Aちゃんの言葉に首がとれるくらい横に振る。俺の言葉に何も言わないので不思議に思って、顔をあげた。
『私はそんな素晴らしい人間じゃないよ』
君の音は驚く程、静かで君の顔は複雑そうに歪められている。その変わりように俺は思わず言葉が詰まってしまう。
髪飾りについた橙色の石の意味を聞き、俺は買うと決めた。君が俺に与えてくれた物だから。
(幸福な日々って意味なんだよ)
「そんなことない」
俺は君と会って救われた。やっとの事で絞り出した言葉は君に届いていただろうか。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時