第捌話「音柱と少女と」 ページ11
＊＊
今日は、Aと任務が一緒だった。二手に別れると、彼女の方に鬼が出たらしい。
「お願いしますっ!!……やめてください、助けてください……お願いです」
Aの元へ行けば、女が地面に額を擦り付けていた。女の背後には、鬼がいる。異様な光景に首を傾げているとAが口を開いた。
『それは村人を何人も喰っています。見逃すことは出来ません』
「……あ、兄は、本当はそんなことをする人じゃないんですっ……だから、」
その言葉に状況を察する。鬼は少女の兄なのだろう。たまにいるのだ。身内が鬼になり庇う人間は。
手伝ってやろうと思った瞬間、鬼が動いた。鬼は飛び上がると、Aに向かって襲いかかる。
__罪の呼吸 壱ノ型 罪深き命に眠りを
橙色が月明かりに照らされ輝いたかと思うと、刀を鞘に収める音共に、鬼の頚は飛んでいた。
「いやぁぁぁっ!!……なんで、なんで、なんで殺したの」
刹那、女の絶叫する声が響く。Aの隊服を掴み、泣きじゃくっていた。その姿に視線を逸らしたが、何かを叩く音に再び視線を戻す。
「人殺しッ!」
「おい。その辺にしろ」
Aの白い頬が赤くなっているのを視界に入れた瞬間、気づけば女の手を掴んでいた。暴れる女を他の村人へと渡す。そうでもしなければ、俺が女の腕を折ってしまいそうだ。
「ド派手にやられたな、A」
『頬を叩かれただけで終わったのですから寧ろ、安いものです』
彼女は悪くない。あの鬼を見逃せばもっと多くの人間が死ぬ。鬼殺隊として当たり前のことをした。感謝されても、責められる義理などない。なのに、笑っている。
『私、優しくないから……こういう時、炭治郎ならどうしてたかな』
鬼になった妹を守る少年。あいつなら同情するだろう。驚く位、優しい人間だから。けれど、
「お前は間違ってねぇよ」
(お前だって優しいだろうが)
罪の呼吸について俺が知っていることは少ない。が、以前教えてもらったことがある。壱ノ型は鬼に痛みを与えず一瞬で、殺せる技だと。その小さな頭を撫でれば少し肩が跳ねた。
「お前が人殺しなら俺はもっと汚れてる」
昔を思い出すと、いつも赤色がちらつく。暗殺なんて日常茶飯事。そう思うと、酷く俺の手が汚く見えてAの頭から離す。
『それでも、天元さんの手は暖かいです』
白く小さな手が重なる。その時、初めて自分の手が震えていることに気づいた。
(いつだって、お前は救ってくれるんだよな)
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (
レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして！お話面白かったです！更新頑張ってください！ (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです！夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ！完結おめでとうございます！！とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました（笑）今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょこもち | 作成日時：2020年3月18日 17時
