ビワーガノ・デ・ウラク【あんスタ！】 (ページ35)

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暗闇,034 ページ35

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拒絶を裏付ける跡が、そこだけ低温を帯びてゆく。冷たく、凍りついてゆく。アイドルなのに拒絶をされた。その事実だけが刺さったけれど、アイドルの彼女にとって、それがどれだけ辛いものか。

並大抵な一般人には分かるはずもなかった。

「えへへ、失礼しますね。お忙しいところ、ありがとうございました～……」

いつもの弛緩した語尾が、なおも痛々しく感じられる。男子生徒は床で尻もちをついたままの彼女を、冷たく睨み見据え、早々に去っていった。軟弱者。流されてばかりの、偽善者が。生きている価値すら見受けられない、愚中が。

(拒絶は、つらいです。くらくて、さみしくて。拒絶することでみんなの『まっくろ』がきえてなくなるなら、わたしはその罰をあまんじて受けます……。)

(たったひとりの犠牲は、かえりみません。それがわたし自身のはなしならば、なおのことです。)

「……くるしいですよ。わたしにも、みんなの笑顔をみせてほしいです。愛くるしい、とうとい命です。わたしは愛しつづけますからね」

一方的に通行していくだけで、決してそこに『理解』が生じることはない。愛を捧げていても、気味悪がられて宙にあっさりと消えていくだけ。いったい誰が、そんなもの望んだというのか。

「Aさん！おはようございまああす！！」

「わわ、あれ…。まま、こんなところで『ぐうぜん』ですね。ふふ、遅刻ですか……？」

「いや、今はそんなことより言うべきことがあるぞ。分かっているな、Aさん？」

「えぇ、なんでしょうね。む～ん」

キラリと双眸の奥で、眠っていた何かが目を覚ます。睨むわけでもない。ただ、情報を得るために彼女を見つめるだけだ。

「待ってください。おねがいですから……かれの行動を、『ひてい』しないであげてください。彼の『げんどう』を否定していいそんざいは、この世にだれ一人としていないはずです」