暗闇,033 ページ34
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「では、わたしはジェノサイドのエサを買ってきます。そういえば、昨日からなにもあげてませんでした〜……」
「いきものを育てるって、意外とたいへんですね」と零に微笑みかけた。彼女相手に「勿論」なんて言えず、少々返事に困った様子だったが、案外容易に見つかるようだ。
「うん。でも、育てる覚悟はあるんだろ?そういうのは、死なせたくないって想いがあるなら大丈夫なもんなんだよ」
「何かあったら、いつでも頼ってくれて構わね〜から。絶対に一人で抱え込むなよ」
一言多めに、零の優しさが降ってくる。ちらちらと降ってくるけど、全てが優しいわけじゃない。敢えて突き放そうとする『覚悟』くらい、彼にもあるのだから。
「わかりました〜……。あれ、そう言ってるうちにベル鳴っちゃいましたね。それではランニングがてら、走ってきましょうか〜……♪」
「はは。自由だな〜、昨晩は雨が降ったみたいだから走らない方がいい____って聞いてね〜のか」
部室のドアを開けたまま、そのまま突っ走っていったみたいだ。言ったそばから俺の元へ『搬送』されなければ良いんだが。一抹の不安がよぎったが、すぐにまた眠りへと向かった。
☆
「すみません、そこのあなた。」
まずは、片っ端から声をかけてゆく。名前も知らない生徒に馴れ馴れしく。勿論『月王A』を知らない生徒などいないわけで、誰も彼もが彼女を侮蔑の眼差しで見下した。
「ウーパールーパー用のえさをさがしているのですが。わたし一人ではむずかしくて……すこしでもいいので手伝ってはもらえませんか?」
これは絶好のチャンス、とばかりにその生徒は彼女を突き押した。大嫌いな奴が困っているなんて。もっと困らせてしまえ。そういう意識だ。
なにが、学院をよくするものか。その間違った「物語」の裏にしいたげられた者はいないか?聴衆は、そんなことを一度でも考えたことがあるというのか。この学院に必要なのは、そういうところじゃないのか。なんて、優しすぎる彼女の代わりに、是非言ってやりたい。
「うっ。……あの、なにか…?」
突き押されても、こんな様子の彼女に男子生徒は尚も腹を立たせる。違うのに。彼女だって本当は分かっているはずなのに。これ以上、えぐってはいけない。
ーーーそんな扉を無理矢理にこじ開けられた。
「っ…、ごめんなさい。初対面のかたに『ぶしつけ』でした。他のかたにあたってみます」
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日向サク(プロフ) - ありがとう〜 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
しょーり - サイコー!! 大好き!! キュンキュン!! (2017年12月14日 18時) (レス) id: d8a6f4a6f4 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - とってもいいです!!最高です!!応援しています!更新頑張って下さい! (2017年10月17日 1時) (レス) id: f65f9d6e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク | 作成日時:2017年9月16日 10時