暗闇,024 ページ25
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「あぁほれ、もうこんな時間じゃ。春先とはいえまだ寒いからのう、これを着ていくといい」
「手ぶくろ、ですか」
手袋を送ることの嬉しさより、彼女にはもっと喜ぶべきことがあった。極度の寒がり。冷え性であるということを覚えてくれていた零に、喜びを伝えなくては。
「ですが…これ、『もちぬし』のおなまえが書いてありますよ?うふふ、とうぜんわたしは使えませんね」
「えっ、なかなか痛いところを突くんじゃのう…。」
「いいんじゃよ、これは凛月に渡そうとしたが投げ返されたもの。『お下がり』と思ってもらえばいい。それでも嫌なら我輩がもう一度作るが……」
あぁ、なんていうことか。お下がりまでも、もう一度作ってやるとまでも、彼はどこまでも深く愛せるようだ。
「すみませんが、今日はおうちの者がむかえにきているんです。なので使うことはありませんが、たいせつに『ほかん』することにします」
「『おにいちゃん』とはなれるのは、身を裂かれるよりもつらい……はぁ」
それを言うことも見通してなのか、零は困惑する彼女を嬉しそうに眺めた。「我が妹に反抗期はあるのだろうか」と少し心配もしている。
「高校生らしく、学院でお泊りなんて良いよな〜……なぁA?」
「えっ。まあ、できるならやりたいですけど」
何でもない日常会話に、いきなり『素』の朔間零を出してきたので、当然彼女は腰を抜かしそうになる。嬉しさの反面、困惑はもとより深くなる一方だ。
「反抗期がないお前からしたら、きっと良い経験になるよ。それも今日するかどうかの問題だぜ?なぁ、マジで。どうすんだよ?」
無論、彼女がそんな野蛮なことやるわけないのに。他人が受けた痛痒を人一倍悲しむ聖女が、そのような悪童首魁の言い分など聞くわけがないーーーと、信じたかった。
「いいですね。久しぶりですからね、この感覚。我ながら血が滾(たぎ)るおもいです……♪」
「おぉ、珍しく『素』じゃのう。やはり月王Aはこうでないと困る……♪」
「くっくっく……☆」
「うふふふふ……☆」
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日向サク(プロフ) - ありがとう〜 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
しょーり - サイコー!! 大好き!! キュンキュン!! (2017年12月14日 18時) (レス) id: d8a6f4a6f4 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - とってもいいです!!最高です!!応援しています!更新頑張って下さい! (2017年10月17日 1時) (レス) id: f65f9d6e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク | 作成日時:2017年9月16日 10時