５２話 ページ4
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「もうやだ……」
限りなく続くかと思いきや、案外今回は歯止めが効くようだ。朔間先輩は「どうしたんじゃ」と、少し困り果てた表情で私の顎を斜めにあげる。いわゆる顎クイ、とか言うやつではないだろうか。
「どうして、こんなに苦しいの。私はずっと朔間先輩のモノで居たいだけなのに……いつもその願いさえも阻止してくるの。」
「……私の周りをうろつく、お邪魔虫が」
朔間先輩は別に驚いた表情を見せるわけでもなく、いつも通りとでもいった表情で、私にこう告げた。
「あぁまたか。それも仕方ないことなのじゃよ、A。お前が妬ましくて辛い。そう言った愚かな女子がお前を狙うのじゃ」
「それって仕方ないの？私が苦しまなくちゃいけないのは。朔間先輩は助けてくれないのかな、私を想ってるとか言っておきながら」
背後から耳元に、ふうっと温かい吐息がかかる。今なら大事な話をしてるから、気にならないんだよ。いやらしく上に這い上がる拳さえも。もしくは、首筋に爪を立てる狂おしささえも。今なら、全部愛しいと思える。
「お前こそ。我輩を想うとか言っておきながら、さっきもこうして他の男に身体を預けておっただろう？それはすこし、狡(こす)くはないかの〜？」
「い、今はそういうのいいから…。私の質問にだけ答えてよ、先輩はあの『お邪魔虫』共をどうしてくれる？」
「いやいや、それはちと傲慢じゃよ？」
「よりにもよって、我輩にそれを強要するというのか。難儀じゃ、叱責したいがそれが叶わぬというのも……恋の質(たち)じゃのう」
ひと息ついて、朔間先輩は喉を鳴らす。どうやら答えが返ってくるようだ。もちろん決まってる、そうだよね？
「うむ、消そうか。お前を苦しませるものすべて、闇に葬り去ってしまおうな。お前を縛って調べを聴くのは、別に後でもいいわけじゃから…♪」
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作者名：日向サク | 作成日時：2017年10月23日 18時
