43話 底抜けの空 ページ44
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「ぐう。……ラヴ・フォーティー」
「ふふ。負けてるじゃ〜ん、大丈夫なのかなぁ? 息切れしてるしぃ……でも残念、俺はどんな勝負にも手を抜かないの。」
「あんたは今崖っぷち、潔く死んじゃいなよぉ♪」
「テニスでしょ……。あぁだるい、何を本気になっちゃってるのか。死ねと言われて死ぬ奴はいない。 はは、負けないでしょ」
数字で表すと、0−40。 認めたくはないが、『崖っぷち』というのは事実。泉先輩は、躊躇もなくアドバンテージサーバーを打った。
「おっ、拾ったな〜? おれはそんな力も残ってないと思ってたのに。 その気があるなら、おれは応援するよ。 頑張れ、頑張れ……♪」
「す、すごいなぁ。 負けず嫌いな泉さんに、あそこまで食いつくなんて。 Aちゃんもどこか超人的なところがあるよね……あはは、流石は朔間先輩の妹さん。」
「真ちん。 遅かったな、……あぁ言わなくてもわかってるから。 お疲れさま。 おれはAが、いつ倒れても駆けつけられるよう見守ってるんだけど。 真ちんもどうだ?」
「ど、どうも。 時間ずらしたかったのもあるんですが、違いますよ。 すこしユニットの方で相談があったんです」
「そうだったのか?」と、なずな先輩の声が聴こえた。どうやら遊木くんも来たようだ。 そろそろ体力的に終わりたいが、それに及ぶには私が負ける方が早いだろうし。 それは困る。
「やだなぁ? 俺、躾のなってない後輩を正すのは大好きだけど、病人を甚振(いたぶ)るほど悪趣味な奴でもないしぃ……?」
「大丈夫…? こっちは限界まで粘るけど。」
ラインぎりぎりで余裕ぶっこいてたので、ここで一発、ネット手前で鋭く打ち込んだ。 人口芝生が泥濘(ぬかる)んで見えて、ぐにゃりぐにゃりと歪んでいるようだった。
「! くそっ、間に合わ………っない!?」
「よぉし、とった。 余裕ぶっこいてる先輩から点を取ったぞ……次こっち。サーブ、ね」
泥濘みに水分が増したように、足をとられていく。 もうすこし、あとすこし。 次のサーブでピンポイント、バックハンドの打ち返しにくい方向に打てば______。
「……ひっ、」
−−−−底が抜けた。
わたしは気持ち悪さのあまり、ラケットを投げたし、空を仰ぐようにして後ろに倒れこんだ。ボールが後からついてくるみたいに、ボトッと落ちてきたけれど。
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黒羽 - はい!!応援しています!でも無理しないでくださいね!!(*´ω`*) (2017年4月26日 22時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
日向サク(プロフ) - 黒羽さん» おはよう!コメントありがとう、嬉しいです!なかなか夢主の印象を聞く機会が無いので凄く助かるよ!これからもよろしくね!頑張っていくよ〜>* ))))>< (2017年4月26日 6時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽 - 夢主ちゃんが超かわいいです!これからも楽しみにしてます! (2017年4月26日 6時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 21時