検索窓
今日:8 hit、昨日:4 hit、合計:86,937 hit

15話 あんず ページ16

〈翌日〉




「うん?……なにこれ。」



午前6時半。この家の誰も、目を覚まさない時刻。着替えを済ませて、部屋を出ようとした時に私はふと気づいた。毎日整理整頓を欠かさない綺麗な机にぽつんと、一枚のメモが置かれているのだ。




【ごめんね。なんか、気にしてるみたいだったから。もう言わないなら俺も気にしないよ。あぁ、めんどいからあんまり拗ねないでね〜】




___『たった一人のお兄ちゃんより。』



そんな締め言葉ってあるだろうか、誰かさんに込めた憎しみがそのまま皮肉に変わって、私に飛びかかってくる。たった一人の……ううん、たった『二人』のお兄ちゃんなんだけどね。



メモ用紙を破こうと持ち上げると、裏に何かが描いてあることに気付く。____サインだ。凛月のサインが書いてあった。




(あ、あいつ……!)



身内が書いた落書きと思えば、「まぁそんなもんか」と納得できるんだけど。アイドルのサインを貰えるなんて、そんな特別感が心に湧いてきてしまった。実際イライラはしたけど、破くことは決してしなかった。





______

_______________





「うあ。今日は一段と、日差しが強い……」



「えっ、うわあ。だ、だれ……?」



春らしいピンク色のカーディガンを着合わせた女の子が、私に折り畳み傘を差し出している。あっ、たしか兄者っぽい人がそんなことを呟いてたような……。雰囲気からして、よくある『ならず者』ではないと安心した。



「え…?『あんずっていいます』って?ごめんね、別に名前は教えてもらわなくてもいいかな……知ってて良いことないと思うし。」



あまり話すのが得意じゃないのか、ゆっくりとひとつずつ話すたびに私の顔色を伺う。小さな声で細々と話すものだから、ひとつひとつ行ったことを復唱して確認する。



「『プロデュース科』……?ふぅん、そんなのがあったんだ。____あぁ、来年からなの…」



「それで、その手に持ってる傘は何……?『辛そうなので是非使ってください』? うへぇ、なんでこの子初対面の相手にそんなことできるの……」



「ううん、なんでもないけど。女の子なんだし日焼けとか気にした方がいいよ、わたしは大丈夫だから放っておいてほしいな」



「わたしに構ってたら、あなたまで遅刻しちゃう……」




身長が私よりも数センチほど小さいこの少女に、つい誰かさんの血が騒いで、年長者の世話焼きをしてしまう。

16話 名乗る覚悟→←14話 花子



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
135人がお気に入り
設定タグ:朔間零 , あんスタ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

黒羽 - はい!!応援しています!でも無理しないでくださいね!!(*´ω`*) (2017年4月26日 22時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)
日向サク(プロフ) - 黒羽さん» おはよう!コメントありがとう、嬉しいです!なかなか夢主の印象を聞く機会が無いので凄く助かるよ!これからもよろしくね!頑張っていくよ〜>* ))))>< (2017年4月26日 6時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
黒羽 - 夢主ちゃんが超かわいいです!これからも楽しみにしてます! (2017年4月26日 6時) (レス) id: c7e72736b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。