100話 ページ5
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「ふえぇ、かいちょぉ……うわ〜ん!」
びえ〜ん!と泣き噦(じゃく)る。 その咆哮が学院中に響き渡ってしまいそうなほど、叫ぶ。 会長は煩そうな表情を一つもせずに、「どうした? もっと泣いていいぞ、誰もいないから」と背中をさすってくれた。
今まで募った寂しさが、下からさすられる動きと共に、慣性的に吐き出させようとする。 ここにも、魔力が働いているのではないだろうか。
「うん、大丈夫、頑張ってる奴は一人にはならないから……。 そういう風に世界は出来てる」
「うわ〜ん!」
時々、理解のし難いなだめ方をするが、今は会長の声であったら何を言おうと関係のないことだ。 この時の会長もまた、尋常な状態ではなく、何処か人には見せられないようなことになっていたんだと思う。
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「A、もう大丈夫か?」
「うう、あ〜沁みるっ、うん、いける」
翌日に目が腫れたりでもしたら大変なので、目薬を目に差した。訊いたのは目の心配ではないのに、と思われたかもしれないが、「よかったな」と私の首の裏に左手を添えた。
____なかなか、後処理の上手いことだ。慣れている。 目薬を渡したことや、こうして頚椎を冷やすように手を添えたこと。 誰かにやって上げたことがあるのか、それともただの教養なのか、どちらにしろすごいことだ。
「Aは、あの子が嫌か?」
「えっ? さあ、それはなんとも……」
「プロデューサーが嫌いなのか木下あんずが嫌いなのか、それとも単に女だから嫌いなのかは、そんなの、一つずつ要素を取り除いて実験でもしないとわからないね……」
心底困ったように俯いた。 実際、本当に困っている。 一度だって、あの子を前にして冷静でいられた試しがないのだから、分かりようがない。
「それは難しいけどな。 でも早い内にどうにかしね〜と、仕事が手につかなくなるぞ? 先輩プロデューサーとして、色々訊かれたりもするだろうからな」
そんな、私だけが意識して悪い状況に陥っているような言い方、間違いではないだけになおのこと悲しいではないか。
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伊達 政宗 - ヤバい…零さんが、良い先輩過ぎて、なんか泣ける← (2019年10月28日 23時) (レス) id: f7e36ec018 (このIDを非表示/違反報告)
莉莉子(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても面白いので続き楽しみにしてます。お体に気をつけて無理せずに更新していただけると嬉しいです (2018年11月3日 23時) (レス) id: 839bccc6ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2018年10月27日 19時