98話 ページ3
〈数分後〉
今日は早めに切り上げようとリーダーが言ったので、鶴の一声で、不満を垂らすものもいたが解散となった。
「晃牙くん、コンセント抜いてー」
「それ今抜いたってよ、コイツが」
「ん? なっ……」
後ろを振り向くと、すぐ後ろに彼女が、八の字眉で抜いたコンセントを持っていた。その後ろで晃牙くんが恐ろしい表情で、さり気なく視線を渡していた。
「……」
「おいコラ。テメ〜は礼も言えね〜のか?」
「うるさいよ。 というか、なんでこの私がそんなことをしてやる義理があるんですか? しかも、女なんかに!」
刹那、空気が冷えたのを、当事者ながらも察した。ここはメンバーがいる前だ。 恥だろうが何だろうが、今はただ、この場を凌ぐだけでいい。
「あ、ありがとうございます……」
ニコッと嬉しそうに花を咲かせている。 ふん、人の気も知らないで。 無邪気なその顔を見ていると、何故か、苛々しているのが馬鹿らしく思えてきた。
ちぇっ、と少し食い気味にコンセントを奪った。 コードが熱くなっていたので、一度顔を見上げて確認しては、彼女の心情を察した。
「帰ります」
「あぁ待ってくれ、嬢ちゃん。 嬢ちゃんは少し残ってくれるか? 時間があればでよいが」
「え……?」
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「用件は何ですか? 出来れば一秒でも早く退出したいんですが」
「敬語、か……。 嬢ちゃん、いやA。そんなにあの子が嫌か」
「嫌です。 くそジジイも嫌」
二人っきりの時は、会長会長と馴れ馴れしい口調で俺にくっついてくるのに?
そんなことを思っているんだろう、まだキャラを確立してそう日は経っていないから。 相手をそういう風に読んで、この人は生きているのだろう。
「よぉしよし、わかった、こっちにおいで」
「は」
「寂しいんじゃろう? みんなおぬしをわかってくれないんじゃものなあ」
(?どういうこと?え?意味わかんないんだけど)
ふらっと意味もなく立ち上がった。 意に反して、何故か『立っていないといけないかもしれない』という意識があった。
「な、何を言っているのかさっぱりですよ……?」
「今にわかる。 というか、この半年ほどお留守番をさせられたら嫌でも察すると思うんじゃがのう」
拳をふるふると震わせて、縋るようにジジイを見た。 何が、何が起きてるのかさっぱりわからない。 いや、本当に知らん。 この半年の間で会長を待っていても、知らないものは何も知らないのだ。
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伊達 政宗 - ヤバい…零さんが、良い先輩過ぎて、なんか泣ける← (2019年10月28日 23時) (レス) id: f7e36ec018 (このIDを非表示/違反報告)
莉莉子(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても面白いので続き楽しみにしてます。お体に気をつけて無理せずに更新していただけると嬉しいです (2018年11月3日 23時) (レス) id: 839bccc6ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2018年10月27日 19時