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97話 ページ2

〈数時間後〉



「今からレッスンを始めるよ。 この前の続きから、……はい、流すからしっかり踊るんだよ」



今日は運が良くも、講堂のステージと音響の両方を借りることができた。 ジジイが予約を取ったので非正規かどうかは知った次第ではないけれど。 ちなみに、素人の彼女……木下あんずは集合の30分前に来ていた。 きっと最初だからびびってこんな律儀なの。 プロデュース科の『華』だもんね、そういう魂胆があるに違いない。


「おお、いいねえ。 会長、好調だね!」


「……煩いのう。 黙って見ておれ」


「きゃー」


グーパーと拳で握り潰すかのように操っている。 新しい女が出来たから、そう過激に踊るんでしょ? 気分が悪くなって口角をへの字に曲げた。______すべての曲目が終了した。


「ん? 質問かな、あんずちゃん。……レッスン中になに?」


圧によって、数秒のあいだ、彼女を凍結することに成功した。 それでも愛嬌のある茶髪を見せつけられているようで、苛立ちが隠せなかった。 嫌なんだよ、長年の夢だったこの舞台、私の居場所が奪われるのが。



「ほう。 つまり試聴用のカセットが欲しいっていうことでいい? ふぅん、どうしようかなあ……これ『UNDEAD』の未発表曲なんだけど」


「第一、カセットなんて使えるラジカセ、今どき持ってないでしょ?」


(なんで急にそんなこと言い出すんだよ、この女……⁉)


「怖いんだけど!」と心のなかで叫声を挙げた。 これだけ酷い仕打ちを受けても、まだ噛みついてくるっていうの? お前ごときが!このわたしに!


「む? なぜそんな顔をしているんだ?」


「おかしい?」


「ああ」


「もう見慣れたが」と何でもなさそうに呟いた。 おまえ〜〜? まさか、そんなことを思っていたなんて。 苦手なやつが目の前にいたら、そういう表情になるのも仕方がないというもの。ああ、もう、絶望でからだが壊疽(えそ)していく。


「おう、Aよう。 何でもね〜なら返事しやがれ」


「ああん? 晃牙くんのくせに私に指図しやがってさあ……? ごほん、ええっと木下あんずさんでしたっけ、たしか。 特別に許可しますけど絶対にSNSとかに投稿しないで下さいね」


「おおっと、つい本音が♪」とCDを素直に手渡してやった。 ストックは常に持ってるからね、いつでもくれてやることは可能だよ。

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伊達 政宗 - ヤバい…零さんが、良い先輩過ぎて、なんか泣ける← (2019年10月28日 23時) (レス) id: f7e36ec018 (このIDを非表示/違反報告)
莉莉子(プロフ) - 続編おめでとうございます! とても面白いので続き楽しみにしてます。お体に気をつけて無理せずに更新していただけると嬉しいです (2018年11月3日 23時) (レス) id: 839bccc6ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:日向サク x他1人 | 作成日時:2018年10月27日 19時

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