◇黄花秋桜 1 O×N ページ1
【月下美人】の続きになります
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僕の病室の窓から見える
なんてことない
いつもの景色
その窓から見える景色に
ひとりの男の人が
セットになった
いつも定位置なのか
季節によって
そこに座る時間帯はかわるけど
釣りにきている
貴方が
気になりだした
それは
雅紀が
「これはね!ニノの誕生花なんだよ!」
目尻にシワをつけて
ニコニコしながらもってきてくれた
"黄花秋桜"という名の花を
持ってきてくれたときからだ…
いつもの窓の景色にその花を飾ってくれ
いつものように窓をみたら
その花の向こうで
釣りをしている貴方をみつけた
今までもそこにいたのか?
それは今でもどうかわからないんだけど
でもこのときからはっきりと
自分でもびっくりするくらいに
僕の瞳が貴方をとらえたんだ…
子どものころは
雅紀に付き合って
よく外で遊んだりした
でも中学くらいから
突然の体調不良で
入退院と手術の繰り返しで
僕は外で遊ぶ
なんてことができなくなった
しかも…なかなか深刻な病気らしかった
雅紀の家は花屋で
お見舞のたびに
いろんな花を持ってきてくれた
でも
僕にはその花をキレイだって
思えなかったんだ…
だって毎回かわる花は
僕が入院してるから
見るからであって
元気だったら
きっと知ることも
触れることもないことなんだと思ったから
キレイだって思えなかった
雅紀にも花にも罪はないけど
全然嬉しくなかったんだ…
ある日の夏
雅紀が持ってきてくれた
"黄花秋桜"だけは
全然違った…
その花と貴方がセットになって
キラキラして見えたんだ
だから
夏の季節になると
ほとんど黄花秋桜を
持ってきてもらうようになった
その花と貴方が
僕には一緒に見えたから…
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作者名:REN | 作成日時:2021年2月21日 22時