◇月下美人 11 ページ38
体をキレイに拭いて
抱きしめあいながら
寝転んだ
和也にシャワーに入るように言ったけど
頑なに入らないと首をふるから
俺もそのまま離れがたく
ベットに寝ていた
「和也…」
「うん?」
「……順番が逆だし…ついさっきあったばかりで信用ないだろうけど…俺…おまえが…」
すっと
唇に人差し指を置かれ
近づいてキスをされた
その唇が離れたから
続きを言おうとしたら
またキスをされた
あぁ…なんか言わせてくれないのかな…
って思って
されるがままにしていたら
すーっと
和也がそのまま
眠ってしまった…
朝起きたときにでも改めて言えばいいか…と
のんきにそのときは思って
額にキスを落として
俺も眠りについた…
.
朝
起きたら和也は…いなかった
"智…ありがとう"
ただ一言
メモが置かれてるだけだった
.
帰りの道では
あんなにキレイに咲いていた
小さな白い花は
見事に萎んでいた
あれは夢だったのだろうか…
でも俺の背中に残る痛みは
現実だったと知らせる…
月明かりに照らさ
シーツに包まり
キレイに微笑む
和也…
俺の心に優しく響くあの声
.
その後も
何度もあの場所に同じ時間…
違う時間…
季節が変わって
何年も通ったけれど
和也に会うことはできなかった
唯一の思い出
後日調べた
あの白い花は
【月下美人】という花だった
花言葉なんかもあると知ったのもこのときで
〈「はかない美」「はかない恋」は、ゲッカビジンが夜に咲き始め、翌朝までにしぼんでしまう一夜かぎりの花であることに由来します。また、「あでやかな美人」の花言葉は、艶麗な美女のようなおもむきがあるその花姿にちなみます。〉
まさに
あの日の和也みたいだ…
そう思った
.
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作者名:REN | 作成日時:2020年4月17日 11時