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第弐話 ページ3

‐呉島邸
Aはインターフォンを押した。屋敷を出る前に連絡を入れたこともあり、すぐに部屋へと通される。そこにはこの屋敷の主である貴虎がA達を待っていた。
「突然すみません…。そして、お待たせいたしました」
「いや。待ってはいない。俺も今帰ったところだ」
「貴虎様。光実はまだ学園に?」
「あぁ。そろそろ帰ってくるはずだが」
「A様。私はお荷物を」
「えぇ。お願いします」
「案内させよう」
「ありがとうございます」
マリアは貴虎が案内を命じた使用人と共に少ない荷物を持ち、Aの部屋へと向かう。貴虎はAを連れて自室へと戻った。
「A。今宵だが…」
「私たちの披露をかねた夜会が本郷家で行われるのでしょう?」
「あぁ」
貴虎は彼らしくなく不機嫌さを隠しきれていなかった。
「気が乗られませんか?」
「あぁ」
「夜会はお嫌いですか?」
「嫌いではない。私の役目も理解している」
貴虎の役目…それはユグドラシルの責任者のひとりとしてそして、呉島家の当主としてビジネスの為に上流階級の者との関係を築く必要がある。それはAも一緒だった。
「では、何故です?」
「Aは夜会は嫌いか?」
「私も嫌いではないです。お恥ずかしい話ですが、私も当主としての役目は理解しているつもりですが、周りの方が私にあからさまにごまをすりに来られるのが嫌なのです。というより、明らかにごまをすりに来たと分かっているというのに相手をするのが嫌なのです」
「俺もだ。集ってくる女達の相手をするのが面倒くさい」
「それは贅沢な悩みですね」
「贅沢?」
「はい。それだけ貴虎様が魅力的なのですよ。世間にはモテなくて悩まれている方々も大勢いらっしゃるとマリアさんが言っていました」
「肩書きが欲しいだけだろう。『私』ではなく『ユグドラシルの幹部の妻』という」
「確かにそういった方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、私は『貴虎』様の妻である事を誇りに思います。私のような方も中にはいらっしゃるのではありませんか?それにその悩みならば今回の夜会で解決いたしますね。私を紹介するのですから」
「そうだな。だが、挨拶をすませてさっさと帰るぞ」
貴虎が夜会を嫌がるのには他にも理由があった。Aを他の男の前に出したくないのだ。発作の心配もあるが、ただ他の男にAを見せたくない。貴虎自身も飽きれるぐらいの幼い独占欲だ。
「はい」
優がその事に気づいていない事が貴虎にとって唯一の救いだった…。

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秋桜。(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2017年1月3日 12時) (レス) id: 86e204d5a0 (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 更新がんばってください!!気になって仕方ないんです~ (2016年3月2日 22時) (レス) id: ed755ced1b (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - 続きが気になります!!頑張ってください (2016年2月13日 21時) (レス) id: ed755ced1b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 設定を少しと、主人公の名前が夢主さんになっていないところがありましたので修整しました。そして、第玖話を続きを更新しました (2015年11月30日 23時) (レス) id: 4c6f3a6970 (このIDを非表示/違反報告)
まき(プロフ) - おもしろいです(≧∇≦*)次も楽しみです(〃'▽'〃) (2015年11月29日 16時) (レス) id: ed755ced1b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年10月25日 12時

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