月下美人の君【王賁ルート】

雨過天晴 ページ29

蒙武将軍が汗明を撃破してから、事実上秦国が優勢になったが、あの李牧の策で今は蕞にまで別働隊の手が伸びているという。
しかし、合従軍に睨まれている今、秦国の武将達は簡単に動くわけにはいかず、数日膠着状態が続いた。


そんな折、全軍に早馬の知らせが届く。
ーーー蕞の奇跡
蕞の城を守りきり、事実上秦国が合従軍に勝利した瞬間だった。


そして、目の前の合従軍が函谷関より完全撤退していく姿に皆、歓喜に震えた。
…この国を、守りきったと。

「オーオー！」と叫び声を上げる蒙武軍の後ろで、Aも生き延びた喜びを感じた。


騰軍の臨時五千人将に任命された蒙恬と王賁も、
同じように並んでその光景を見ていた。



王賁 「……運がない。

首級を挙げるに足る敵将に出くわさなかった

(Aとの結婚を認めてもらう為に、

早く将軍にならねば…)」


蒙恬 「……はぁっ〜〜〜。


いいでしょ…それぐらい。

もっとでっかい宝物を手に入れたんだからさ」


王賁 「！…蒙恬、貴様いつから…ッ！」


蒙恬 「咸陽に戻ったら、
金かかるもの沢山奢ってもらお〜っと！

…なんてね。


改めて… Aのこと、幸せにしてやれよ。


じゃあないと、俺が横から奪うからな」



王賁 「…蒙恬、……ありがとう」



蒙恬 「…ッ！！(あの王賁が、お礼ッ？！)」



その感謝のお礼は、きっと長年お互いにしか
分からないAへの想いを


蒙恬が王賁へ託してくれた事への感謝だった。


だが、散々素直になれと言ってきたのは自分だか、

素直な王賁は正直、気持ち悪い。

世にも奇妙なものを見たかのように
驚きがそのまま顔に現れる蒙恬。


王賁 「…安心しろ。

あいつを他の男に渡す気など毛頭ない…」


断言した言葉は、微塵の疑いもないようで

彼の凛々しい表情が

その気持ちは本気だと教えてくれる。


蒙恬 「………まあ、いいけど。


王賁ってそっちの経験とかあるの？」


王賁 「………そっちとは」



蒙恬 「女性経験……？」



王賁 「A以外の他の女になど興味ない」


蒙恬 「…やっぱりね。汗


Aに悲しい想いさせる前に


俺と遊郭とかでも行ってみる？」



王賁 「いらんッ！！！



誰彼構わず手を出すお前と一緒にするな…！
不愉快だ…！」


蒙恬 「いや、俺はAと出会う前に


色々経験してただけで…


Aと出会ってからはさっぱり…って、

俺のことはいいのっ！」

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