モブだって可愛いだろうが **

12.モブだって動揺は隠せない ページ12

、












「……離れようか」



「……。」



「オイ。何で力込めた？」














埃が少し舞う倉庫の中で、外から柔軟する声が聞こえてくる。










それ以外は無音で、強いて聞こえるならお互いの鼓動くらい。










……赤葦の方が早い。………………負けた。

















「…赤葦、鼓動早いね。運動後だもんね」





「Aといるからじゃない？」




「あぁそっか……私関係ある？」


















赤葦の腕による全身の拘束が解けて、ふっといきなり体への圧がなくなる。



















「鈍感。」




「何急に」




「さっきの壁ドンさ」




「今度は肩かい」
















腰を屈めて私の肩に顔を埋める赤葦。







そういうのは他の子にやれば落ちると思うよ。

















「……普通にときめいたんだけど、俺。」





















数分前の記憶を辿って、









え、って思った瞬間には赤葦は顔を上げて試合でするようなしたり顔で笑んだ。





















「それと、Aは忘れてって言ったけど俺は忘れるとは言ってないよ」







「…そ、それって！」






「諦めるとも言ってないけどな」

















私から離れて扉に手をかける赤葦の妖艶な顔よ。





…………それって、
















「じゃあ、先戻ってるからまた叫んでいいよ」
















ばたん、と扉が閉まる音。私は脱力しながら頭を抑える。
















『諦めるとも言ってないけどな』


















その言葉を思い出しながら「ははは……」と乾いた笑いをこぼす。












「いやいや……流石に」













…いやいやいや、モブとモテ男は恋にはならないって。

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