少女の紡ぐ｛千一夜物語｝〜第１章〜

第十六夜 ページ18

更衣室から出てきたAの顔は死んでいた



「……素晴らしい！」



対して首領は満面の笑顔を浮かべている



確かに素晴らしいのは太宰も認めた



長い銀髪が黒いドレスを包み、何とも神秘的な美しさだった



「それで、私はどうすればいいんでしょうか……」



死んだ顔のままAが尋ねると首領は



「うーん……このまま私の側に置いておいてもいいんだけど……」



と悩んだ末、



「まぁ私にはエリスちゃんがいるからね！君は幹部直属の部下にしよう！」



と結論付けた



下っ端ではなく幹部直属の部下にしたところを見ると、やはり側に置きたいようだ



そして首領が側近に何かを囁く



こっそりAが先ほどまで来ていた服に着替えに行き、エリスと話し出した



何やら盛り上がっていた



しばらくすると



「何のご用でしょうか」



と中原が現れ、太宰を見てとても嫌そうな顔をした



「あれぇ？今日は君の顔なんか見ない予定だったんだけどなぁ？」



「俺だって見たくてお前の顔見てんじゃねぇよ」



険悪ムードになった2人をなだめるいつの間にか戻ってきていたA



いったい何方が歳上なのか



首領がコホンと咳払いをし



「中原くん。君にはまだ直属の部下がいなかったはずだ。……この子はどうかね？」



とAを指差す



「え……」



思わず太宰が声を漏らす



彼は彼女を自分直属の部下にしようと思っていたのだ



中原も同様に驚いた



彼もAを自分の部下にしたかったが、既に太宰の部下と決まっていると思っていたからだ



なのでその提案に一も二もなく飛びついた



当のAは別にどっちでもいい、という顔をしている



「ではそういうことで、中原君……君を呼んだときは絶対Aちゃんも連れてきてね」



寂しそうな顔の首領に対し、嬉しそうな中原



そして不満気な太宰



「そうそう、太宰くんはこの後少し残ってくれ給え。では活躍期待しているよAちゃん」



そう退出を促されたのでAたちは出て行った

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