◎第卅参話 ページ35
私は地図を頭に叩き込んで駆け出す
中也には可能性の低い三つに向かわせた
私の方は可能性の高い二つだ
かと言って必ずこちらにいる保証はない
二つを見終わり次第中也に向かわせた方にも回るつもりだ
待っててねA
絶対私が中也より先に助け出してみせるから
私は休まずに10分間ほど走り続け、一つ目の場所にたどり着いた
助走をつけて扉を蹴り飛ばす
「A！？いるかい！！」
私の声がガランとした場所に響く
しばらくの静寂の後かさり、と音がした
私はそちらに勢いよく振り返ったが、そこにはネズミが１匹うろついていただけだった
「…くそッ」
私はその場所に背を向け、二つ目の場所に向かった
二つ目も誰もおらず、私は少し離れた中也の担当の場所まで駆けて行った
中也の担当の場所の一つにたどり着くと扉が無残に破壊されていた
きっと中也が破壊したのだろう
中にいるAが怪我をしたらどうするんだ
私は舌打ちをして次の倉庫に向かった
角を曲がるとき、ちらりと黒い外套が見えた
中也だ
中也もこちらに気づき、ギロッと睨んでくる
「手前なんで俺の担当の場所まできてんだよ」
「私の担当の場所には居なかったからね」
「…チッ…二つ目のところで手間取ってなかったらお前の顔なんて見なくて済んだのによ」
「どうせ連絡したら会うでしょう。ほら、喋ってる間あったら走るよ」
「わかってるっつの！」
私たちは並んで、競う様に駆けた
何方が姫を助ける勇者に相応しいかを決めるかの様に
中也はペースも考えずにぶっ飛ばしたのだろう
いつもなら直ぐに追い抜かれるはずが私と同じくらいの速さしか出ていない
私たちは並んだまま塀を乗り越え、角を曲がる
降りる時に中也がバランスを崩した
私はその手首を掴み上げ、無理矢理走らせる
こんな所でダウンしてもらっては困る
中也は舌打ちをして私の手を振り払い、スピードを上げた
私も負けじとスピードを上げる
私たちの目に同時に目指す場所が映った
私たちは同時にその扉に手を伸ばした
「「A！！」」
扉が吹っ飛び、砂煙が上がった
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作者名：信乃☆ | 作成日時：2016年12月9日 23時
