◆プロローグ ページ1
それは麗らかな日が差し、穏やかな風が吹く日だった
死んだ部下の墓参りに赴いた俺は目の前に鎮座する灰色の墓を見下ろす
そして白い百合の花束をそっと墓の前に置き、静かに手を合わせた
頭の中にその部下の顔が浮かんだ
よく笑い、よく喋り、俺のヤケ酒に何度も付き合ってくれた一人の情報員
彼奴は敵組織に侵入して情報を盗み出した直後に何者かによって撃ち殺された
『大丈夫っすよ、中原サンは心配性っすね!』
最期にそう言って任務に出発した彼奴の顔が頭をよぎる
「結局…大丈夫じゃなかったじゃねぇかよ…」
目頭が熱くなるのを感じた
堪えきれなかった涙が目から溢れ出す
その時ふと後ろに気配を感じた
「…誰…だ」
俺が掠れた声で呟くとその人影は俺の隣まで歩いてきて無言で真っ白のハンカチを差し出してきた
俺は驚いてその顔を見上げ、その目を見て目を見開く
俺と同じ蒼い目は、何の感情も伝わってこない目だった
だが、不思議と惹きつけられた
「私はその亡くなった方の後任です。名前は冴月A。今日より中原幹部の専属情報員を勤めさせていただきます」
目の前の女はそう言ってしゃがんだ
「…人がハンカチを差し出しているというのにそれを無視して人の顔を見続けるのは失礼だと思います」
そう言われて俺はハッと我に帰った
「…あぁ、悪い。中也で良い」
俺の言葉に冴月が怪訝そうな顔をする
「しかし…」
俺も何故こんなことを言ったのかは判らない
ただぽろっと口から溢れでたのだ
「良いから呼べ」
冴月は暫し考えた後、呟いた
「中也さん。これで宜しいですか」
その澄んだ声に胸がドクンと波打つのを感じた
「…それで良い」
俺は少し赤くなってしまった顔を隠すように俯きながら立ち上がる
「…良い加減、涙を拭かれては。幹部とあろうものが見っとも無いですよ」
それに続いて立ち上がった冴月がハンカチの端で俺の涙をそっと拭った
俺は驚きで硬直する
みるみる顔が赤くなるのを感じた
「さ、冴月…」
「Aで構いません」
Aはそう言って微笑んだ
俺はその笑みに胸が苦しくなるような、そんな感覚を味わった
以前誰かが言っていた気がする
_______これが“ 一目惚れ ” …ってヤツなのか
- 金 運: ★☆☆☆☆
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黒崎雪兎(プロフ) - 千一夜の方も読ませていただいております。どの作品もとても面白いです。これからも応援しています。とても素晴らしい作品をどうもありがとうございます! (2017年4月8日 15時) (レス) id: ca4c1fbb9e (このIDを非表示/違反報告)
信乃☆(プロフ) - 天さんさん» そこまで言って頂けるとは……!本当に作者冥利に尽きるというものですね!!そういったコメントを頂けるとドン引きどころかむしろ私がテンション上げまくってドン引きされそうです……w本当にこんな素晴らしいコメントを頂きありがとうございました! (2016年12月28日 15時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
天さん - 評価1票だけじゃ足りません!なんて書けばいいか分からなくなるほど叫びました!本当に、この作品に出会えて良かったです…ありがとうございました!もっともっとこの作品について語りたいですが、ドン引き間違いなしなので、最後に、本当にありがとうございました! (2016年12月28日 13時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
信乃☆(プロフ) - 莉猫さん» ありがとうございます!リクエストも受け付けておりますので何かご希望があれば是非リクエストして下さいね! (2016年12月18日 1時) (レス) id: 6e49df737f (このIDを非表示/違反報告)
莉猫(プロフ) - すごく良かったです!とても微笑ましく、ロマンティックなお話でした! (2016年12月18日 0時) (レス) id: 7c2539bb5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:信乃☆ | 作成日時:2016年12月1日 6時