１３８話 ページ42
貴方視点
…間に合った。
『もう、だめでしょ。４人とも。独断で危険なことしないの。』
私はそう言って、人差し指を立てた。
「A…？いや…姫様？」
そう呟いたのはアキ。
姫様、それは私の前世の呼び名。
『半分正解。半分間違い。』
今の私の見た目は、ナツとフユくらいの年齢。
ふわりとした髪はストレートとなっていた。
そして何より。
私の目は様々な色が波立っていた。
見た目は前世のまんまだが、中身は現世のままだ。
「…ふっ、ははは…！！！ようやく会えたね？姫君。」
血走った目をした男、死季が笑った。
私は深いため息をついて言った。
『残念だけど、私は姫君じゃない。前世のまま、変らないのは君だけだよ。死季。』
私達は変わった。
生まれ育った環境で。
関わった人たちのおかげで。
死季は何も変わっていない。
闇の中で生きて。
誰とも関わらずに生きたから。
『哀れだね、魂だけの存在が幾千年も封じられていたなんて。』
他人事のように私は言った。
私が、封じた張本人だと言うのに。
『今の暦で言うと、今日この日だったよね？私と死季が契約したのは。』
そう、あれは契約。
破ることの許されない。魂の契約。
「ふふ…覚えててくれて嬉しいよ。…
男は恍惚に笑った。
私の額には皺が寄っていた。
「初…季…？」
ナツが確かめるように呟いた。
他の3人も同様に目を見開いていた。
私はため息をつく。
『私の、前世の名前。初めての季と書いて初季。結局、皆には教えることができなかったけど。』
本当は、時期を見計らって教えるつもりだった。
…違う。それは嘘。
教える気なんてなかった。
私は、任務から逃げたんだ。
『…さよならをしよう、死季。』
「臨むところ…！」
『みんな。2分でいい、彼の動きを封じて。』
「「「「了解！！！」」」」
息の合った返事に、私は思わず苦笑した。
…さすがだな。
私は懐から扇子を取り出すと、それに口づけた。
『…力を貸して。“私達”』
返事はない。
それでも、私は確信していた。
『……ありがとう。』
私は一つ息を吸って、扇子を構えた。
『…散る舞う桜の月明かり』
死季は怪訝そうな顔をした。
『…幾月重ねて咲こうとし』
「…？」
死季の足から力が抜けた。
『散るには一瞬儚き桜』
「…っ！や、やめ…！！！」
ようやく理解したのか死季は目を見開いた。
『だから桜は美しい＿＿＿』
「…あ、あぁぁ…！」
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作者名：まき | 作成日時：2022年9月22日 22時
