【srr】ふっわふわ③ (ページ32)

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１２８話ページ32

ナツ視点
今日は休んでいた間のテストを放課後ずーっとやっていた。

おかげでクタクタだよ…。

「ただいまーっ！」

「「おかえり。」」

…あれ？

二人分の声しか聞こえなかった。

誰か出掛けてるのかな？

「ご飯できてるよー。」

柔らかいハルお兄ちゃんの声が聞こえた。

「やったぁ！今日のご飯はなぁに？」

「サンマの塩焼きだよ。ちゃんと手洗ってから食べようね。」

ハルお兄ちゃんの声ではなく、フユの声が聞こえた。

「はーい！」

少し遠くでハルお兄ちゃんの咽る音が聞こえた。

「げほっ！ごぉっほ…っ！から…っ！！！」

…ん？辛い？

「あれ？アキお姉ちゃんは？」

食卓にはハルお兄ちゃんとフユの姿しかなかった。

「アキは出掛けてるよー。日が昇る頃には帰ってくるんじゃないかなぁ。」

ハルお兄ちゃんは目を伏せながらそう答えた。

「そっかぁ。仕方ないね。」

アキお姉ちゃんにも、ハルお兄ちゃんにも、事情というものがあるのだ。

ボディーガードじゃなくなった今、桜凛家の収入は０に等しい。

だから二人はたまに仕事に行ってるのだ。

特にハルお兄ちゃんが出掛けることが多かったけど…今日はアキお姉ちゃんなんだね。

「それにしても…ハルお兄ちゃん。」

あたしはずっと気になっていた。

「うんー？」

「なんでこんな女々しい大根おろしなの？」

そう聞いた瞬間、ハルお兄ちゃんとフユは目をそらした。

え、なんかやましいことでもあるの？

「ま、まぁ…食べてみたらわかるよ。」

フユは気まずそうにご飯を口に運んだ。

あたしは意を決して、大根おろしを口にした。

「ん゛んっ！？げほっ！かっら…！！！」

あり得ないくらいに辛い。

いやもうこれは大根おろしじゃない。

「だよねぇ…。」

ハルお兄ちゃんは呆れたように笑っていた。

「これ、アキが擦ったやつなんだよ。」

「アキお姉ちゃんが…？…あー、なるほど！」

少し失礼かもしれないけれど、瞬時に理解してしまった。

…やっぱり、アキお姉ちゃんは料理向いてないよ。

「だから俺たちはこうやって薄ーく伸ばしてるの。」

サンマ全体に行き渡るように、二人は少なめの大根おろしをこれでもかと薄く伸ばしていた。

それでも辛いのか、ご飯とお茶の手は止まることが無かった。