【srr】ふっわふわ③ (ページ23)

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１１９話ページ23

『てか、別に敬語じゃなくてもいいよ。そんなことで機嫌悪くしないし。』

…あれ、意外と優しい？

全部持つって言っても『いい』って言うし…。

「わかった。ありがとな。」

『うん。』

旧校舎について、人気もなくなった頃。

葉桜さんが呟いた。

『なんで、キャラ変えたの？』

「…っ！」

バサバサッと持っていた書類を落としてしまった。

『！大丈夫？』

葉桜さんが心配したのは落ちた書類ではなく、俺の指だった。

…え、指？

『絆創膏持ってるけど、……。あー、…。』

葉桜さんは気まずそうに目を逸らした。

…あぁ、そうか。

皆も彼女と距離をとってるけど、彼女も皆と距離をとってるんだ。

絆創膏を受け取って、出血した部分へ貼る…。

貼ろうとする。

利き手を怪我してしまったので、貼るのが難しい。

「手伝って、くれる…？」

『うん。』

葉桜さんは心做しか嬉しそうにしていた。

『別に、キャラ変えた理由が知りたいわけじゃなくて。…今の藤井くん。辛そうだなって。』

…また間違えたね…？

「藤野ね。そうだなぁ…ちょっと後悔してるかも。」

『…あ、また間違えたか。うん。了解。』

旧校舎に居たときは世間話などをしていたものの、新校舎に戻ると少し距離を開けられた。

気を使ってるのだろうか？

『……くん。藤峰くん。』

…あ。俺のこと？

ってかまた間違えたね。

「藤野ね。」

『うん。消しゴム落としたよ。』

…なんか、わざと間違えてる？この人。

「ありがとう…？」

『藤崎くん。』

『ねぇ藤見くん。』

『あ、藤岡くん。』

これは…絶対わざとだな。

あれから一ヶ月が経って。

俺は葉桜さんのことをAさんと呼ぶようになった。

彼女自身の希望だ。

「藤野っち、最近葉桜さんと仲良いよね〜。」

「あんま仲良くしない方がいいよ？何されるかわかんないし…。」

彼女たちは…、悪気は無いのだろう。

本気で心配してくれてるのはわかる。

「…Aさんは、優しい人だよ。」

でも、猛烈に腹がたった。

「…え。」

…あ、やべ。

皆が驚いたようにこっちを見た。

冗談だよって言うべき？いやでも本当のことだし。

「あ、ごめん。俺帰るわ。」

一度腕時計を見て、俺はそう言った。

逃げるのが一番の得策だと思ったから。

「あ…うん、ばいばい。」

きまずい空気になったら、やっぱり逃げるに限るよな。