第五話 忘却の異能 ページ29
そんな会話をしていると、ジサツ嗜癖が増えた……?と国木田君が資料を抱えているのが見える。一番の太宰の被害者だとひと目で判った。
『取り敢えず、自己紹介でもしようか。』
仕切り直す為に1度手を叩いてから、口を開く。
『私の名はAA。太宰とは古くからの友人で、太宰の事がこの世で一番苦手だ。』
「……その自己紹介酷すぎない?」
『事実だ。良いだろう何でも。』
そう返すと、奥の部屋から見覚えのある姿がでて来た。
「Aちゃんじゃないか。」
『おや。乱歩さん。元気にしてました?』
「まぁね。君は死にかけていたけど。」
どうやら矢張り、全てお見通しらしい。私も予測する事で相手の状況を把握する事が出来るが、自分が体験する側だとまた違って感じる……。
『ふふ。殺されたかったんですけどねぇ。』
「この小娘は何なんだ……」
国木田君はそう呟いた。なので、優しい私は1度彼との関係について説明をする。
『太宰とは同じ職場で働いていてね。』
「つまり、彼奴の前職を知っているのか……」
『嗚呼。明かす事は出来ないがな。』
そんなに前職が気になるのだろうか?太宰を見つめて考えるが、ニコリ、と笑顔が帰って来るだけだった。
「A。」
『福沢さん、お久しぶりです。』
乱歩さんの後ろに居た福沢さんに向け、ニコニコと笑って返事をした。
「自害を繰り返す癖は変わっていないのか?」
『其れは4年程してません。殺される約束をしてたので……』
そう云うと、奥の部屋からさらに人が増える。
どんどん人が増えていく……どちらかと云えば少人数の方が好きだ。今すぐ綾辻探偵事務所に帰りたい気持ちがほんの数ミリだけ湧いた。
「Aさんじゃないですか!?」
『嗚呼、谷崎君……元気そうでなによりだ。あの事件以来だな。』
「そ、そうですね……何故ここに?」
『……少々問題があってね。』
その質問をされると私は眉を顰めた。その事には誰もが気づいただろう。
「……Aちゃん。君がここに来た理由は心中をする為じゃないよね?」
『……流石、乱歩さんにはバレてしまうか。』
私は深呼吸してから、太宰に話しかける。自分でも、こんな真剣な声が出せるのだなと感心した。
『────凡そは一緒だ……太宰の異能を使いたい。』
71人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ