第四話 忘却の異能 ページ28
「本当にいいんです?」
Aさんに訊ねた。正直、心配だった。4年も綾辻先生のそばに居たAさんにとって、これは大きなダメージになるのではと考えたからだ。
『嗚呼。』
彼女は何も気にしていない様子で返事をする。
「次は何処へ?」
『……武装探偵社。』
そう云うと彼女は憂鬱そうに嗤う。それを聞いて、少し目を見開いた。
それは、綾辻先生が前にAさんを見つけた場所でもあったからだ。
……もしかしたら彼女は期待しているのかもしれない。
────また、連れ戻してくれることに。
*
私は前のように年齢操作もせず、武装探偵社の前に着いた。
ノックをしようと手を伸ばして、手を止める。
………溜息を吐く。
思い直して、漸くノックをした。
「どうぞ。」
その声が聞こえ、私は室内に入る。
『───やあ。武装探偵社はここで合っているかな?』
「……Aちゃん?」
そう名前を呼んだのは太宰だった。
『……久しぶりだな。太宰。』
私は嗤った。……何に対してだって?
……二度と顔を合わせる気がなかったのに、何度もこうやって顔を合わせてしまっている自分の愚かさにだな。
「い、生きて……」
『残念だが、死ねなかった。』
『少々君の異能を飼い慣らしすぎたらしい。邪魔をされた。』
眉を下げ、態とらしく大きく溜息を吐いたが、反して太宰は嬉しそうに笑って
「────私と心中するかい?」と呟いた。
『……私が死ぬには、異能無効化の君と触れながら死ぬしかない。』
『改めて理解したよ。君とじゃないと死ねないと。』
『……今回は君の異能に遂に頼る時が来たらしい。』
「おや、最終兵器かい?」
『……まあな。』
最終兵器。
これはポートマフィア時代に、太宰と私で巫山戯て呼んだ名前だった。まさかここまで云われるとは最終兵器も予想だにしてなかっただろうね。
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