第百三話 異能 ページ17
淡々と推理を述べながら手を引いて歩いて行く。
「だが、予想は外れた。俺に殺される時、異能が発動してしまったのだ。異能無効化が。」
「その後重力操作の異能も発動してしまい、死ぬ事が出来なかった。それにより、君は谷崎とやらの異能を使って身を隠しただろう?」
「だから、君の死体が見つからなかった。」
「君が生きていると確信した時、訪れる場所は武装探偵社だと推測した。だからその前に張ったんだ。」
「年齢操作の異能によって君は知り合いにバレないようにしていたんだろうが、異能を見抜いた俺にとっては一目瞭然だ。」
『……』
声が出なかった。真実を見抜かれたのだ。
まさか此処まで見抜いていると思っていなかった。
『───この天才が、負けたのか……』
そう呟くと、急に腕を引っ張られる。
足が止まり、顔が近づく。
目の前は綾辻先生しか見えないほどだった。
「ああ。君は負けた。俺によってな。」
愉しそうに嗤っている。
子供が漸く親を打ち負かしたような、したり顔で。
『……そうか。』
私も思わずつられて笑った。
『完全敗北だ……此処まで君しか見えなくなるとは。』
離れてそう云うと、少し驚いた顔をした。
「……気付いてないのか?」
『何が?』
そう訊ねると綾辻先生は笑う。
……それは、まるで愛しい者を見るかのように。
「……引き分けと行こう。俺もこんなにも君に堕ちると思っていなかった。」
その言葉を理解すると顔が熱くなるのが判った。
『……そうしよう。その方が幾分か平和だ。』
彼女も笑う。
いつもの笑いとは違って、彼と同じように、愛しい者に微笑むかのように───。
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