第百話 相反 ページ14
ヨコハマの街中に、一人の美しい女性が歩いていた。
彼女は恐らく20代程度だろう。歩くだけで、まるでそれはドラマのワンシーンの様に思わせた。
そんな中、彼女に相反する男性集団が女性の進行方向を遮った。
今一人?美人だね、何歳?とナンパにはお決まりのセリフを云う男性陣に向かって、彼女は溜息を吐く。
27。
女性は答えると、男性は歳上に見えない。と驚いている。
彼女は急いでいるのか早く退けて、と睨んでいたがそれに効果は無かった。
俺らと遊ぼうよ、と一人が彼女の腕に手を伸ばした。
その様子を見た男性が急いで駆け寄る。
「俺の女だ。手前らはさっさと散れ。」
───中原中也。
身長は小さいが、効果は抜群で集団は直ぐに怖気付いて散っていった。
女性は突如現れた男性に、目を見開いて驚く。
「大丈夫か?」
中原中也は女性に目を向ける。女性はゆっくりと口を開いたが、それは感謝の言葉ではなかった。
『中也じゃないか……相も変わらず小さいね君は。』
馬鹿にした様な笑みだった。
中也はその言葉を理解する前に……は?と呟いた。
変わらずと云われたが、目の前の女性に心当たりが無かったのだ。
『嫌だなあ、この天才を忘れたのかい?』
彼女は自信満々に云った。中原中也には自身を天才だと自称する人には心当たりがあった。
「……手前────Aか?」
『嗚呼、思い出してくれた?』
彼女は満足そうに笑ったが、反して、中也の顔は暗くなった。
彼女は────死んだのだ。
4年前、ポートマフィアを抜けたあの年に。彼奴が消えた年に太宰から知らされていた。
中原中也は彼女の腕を掴むと、重力操作の異能を発動させた。
「誰だ、Aは4年前に死んだ。生きていたとしても歳が違ェ。」
彼女を睨んだが、平然とした態度で笑っている。
───異能力が効いていないのだ。
『少し落ち着き給え。私に異能は効かない。そうだろう?』
『……私の異能を知っている君なら、判るはずだよ。』
「……本当にA何だな……?」
訝しげに訊ねると彼女は笑った。
『私が昔に君にした拷問、またしてあげようか?』
71人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ