第八十九話 鉛筆 ページ2
突然、綾辻先生が私の手にある本を取り、パラパラと捲る
「へぇ……両親の趣味でしょうか?」
もしかしたらこの部屋は書斎にもなっているのかもしれない、そう考えるとこの状態も自然な気がした。
「これを見ろ」
綾辻先生はとあるページを私に見せてきた。
びっしりと文字が書き込まれた後だ。
頭にはてな記号を浮かばせていると、よく見ろ、と云われる。
じっと目を凝らす、そこで漸く私は気がついた。
自ずと机に目がいった。
置かれていたものは、鉛筆。
びっしりと書き込まれたものは全て鉛筆で書かれていた。
いや、大人だって鉛筆を使うかもしれないし、とも思った。
しかし、目に入った机に置かれている小学四年生らしい宿題のプリントには、それと同様の字で文字が書かれている。
小学四年生でしょ?と思い、目の前にあった数学の参考書を手に取る。
それすらも同様の字で書き込まれていた。
その上、判りやすくまとめられて、思考の逃げようがなかった。
もしかしたら、という考えが頭に浮かぶ。
「親を殺害してしまったのはこれが原因でしょうか。」
『さぁ。どうだろうな、決めつけるにはまだ早い。』
積み重なる本を手に取るAさん。
「あ、それは!」
思わず声を上げたが、すぐさま崩れる音がした。
あー、、と行き場のない声が出る。
「現場を荒らすな。」
『……まぁ、ここら辺の本には何もなさそうだから大丈夫だろう。』
そう云いながら本を手に取ると、それをまた雑に重ねた。
突然、Aさんの本を拾う手が止まる。
「……本、じゃない?」
私は呟いた。
一見は本のように見えるが、ダイヤル式の鍵が着いている。どうやら中が開けられるらしい。
それを手に取るが、番号は1223のまま止まっていて箱はすんなりと開いた。鍵なんてかかっていなかったのだ。
「……日記か。」
綾辻先生はそれを見てそう呟く。
なにかヒントがあるかもしれない、とその日記を私たちは見た。
【「日記をつけようと思う。気分転換くらいにはなるだろうと思って始めてみた。最初は何を書けばいいのか判らない。きっと飽きるだろう。」】
一日目はこれで終わっていた。
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