第七話 緊張 ページ9
綾辻探偵事務所に着いてしまった。
「…緊張しているんですか?」
珍しいものを見たと言わんばかりに驚く彼に向かって『私を人間だと思っていないのか?』と睨み付ける。
「綾辻先生と話す為には、冷静さは欠かせないが…大丈夫そうですか?」
『言語を真面に話せているだけで誉めて欲しい位だ。』
緊張により震える手を、深呼吸をして落ち着かせる。
「(……こんな状態のAさんは初めて見た。
彼女は緊張とは程遠い場所にいると思っていたが、彼女も人間らしい。)」
『……よし、覚悟を決めた。行こうか…綾辻行人という人物の元へ。』
はい、と頷く安吾を先頭にゆっくりと後ろを着いていく。
扉の前で安吾がノックをした。
「入れ。」
扉の奥から聞こえる低い声、失礼しますと安吾が言って部屋に入る。
「どうも綾辻先生。」
「珍しいな、坂口君が直々に此処へ来るとは。」
「───その理由は後ろにいる人物が原因か?」
安吾の後ろに上手く隠れていたがバレたらしい。
呼吸を整え、ゆっくりと後ろから顔を出す。
「子供…?」
「珍しく人見知りしてましてね、彼女はAA。綾辻先生と同じ特一級異能力者です。」
『…よろしくお願いします。』
「……貴女が敬語を使う所、初めて見ました。」
要らぬことを言う安吾に対し、軽く睨んだ。
「特一級異能力者…、そうは見えないな。」
其れに返事をするように主の足元で寝ていた二匹のうち、黒猫がにゃお、と鳴いた。
「えぇ、彼女の異能は分からないので、そう思われるのも無理はないですね。」
「分からない?」
「彼女は自ら志願したんです、特一級異能力者にしろと。」
感情の無い目と視線が絡まる…その顔は怪訝そうに此方を見ていた。
はぁ、と安吾が溜息を吐くと、「何時迄そうしているんです?」と背中に引っ付いている私に語り掛ける。
『……った、』
ぼそっと呟いた声は小さすぎて安吾に届かなかった様だ。
少し屈め、とジェスチャーで催促をし、もう一度か細い声で言葉を放った。
『………顔が良かった…。』
「はい??」
あの天才がそんな事で大人しくなるのか、と彼女の顔を見るが、今までの無愛想な顔とは違って随分可愛らしい年相応な顔をしていた。
もしかしたら彼女を唯一止められる相手かも知れない、そう思って綾辻先生へ言葉を綴る。
「彼女はとある組織に居ましたが、此方で保護したんです…此処に来た理由は彼女を預かって貰えないかと思いましてね。」
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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