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「げ、カイザー!おま、なんでいんだよ……!」
「クソ黙れ。ソレは俺のだ」
ミヒャエルと遭遇したことに驚愕を隠しきれない私は、二人に挟まれながら震えることしか出来なかった。
そして、まさか二人が知り合いだったとは思わず、私は傍目から呆然とその口論を眺めることしか出来ない。
なぜミヒャエルがここにいて、潔くんと親しげに話しているのだろうか、という疑問よりも私には不安が満ちる。ミヒャエルに他の男と会うならもう会わない、ということを言われたのを思い出して目の前が白く霞んだ。
絶対に勘違いをされている。けれど、潔くんの前で言い訳することも出来なかった。
「ったく、言った傍からふらふらして、本当に手のかかる子猫ちゃんだな」
「おい、まてよ、カイザー!Aさんは俺と約束して……!」
ミヒャエルは潔くんを無視して、私の腰を抱き寄せてくる。普段よりも荒々しい仕種に声も出せず、彼を怯えながら見つめ返すのが精一杯だった。
「A」
名前を呼ばれたのが、怖かった。普段ならそれだけで喜びに満たされた心が、今だけは冷気に包まれている。
喉が張り付いて応えることが出来なくて、代わりにその瞳を懇願するように見つめていると、小さく舌打ちが降りてきた。
「み、ミヒャ、い、いたい……っ」
引き摺られるように腕を掴まれて、私が声を上げるも今のミヒャエルには通じなかった。背後から見え隠れする彼の横顔は憎しみにも近いような怒りを滲ませており、二人きりになってから表情が変わらないままだ。私はそんな普通の人間らしい彼の姿を見たことがなかったからか、恐怖と共に肝を潰した。
あのミヒャエルが、神の如く神秘的であまりにも美しい彼が、ただの人間の男になる瞬間を見たような気がして、私は大罪を犯したような背徳感に苛まれそうになる。
彼のなすがままになっていると、やがて見慣れた道を通り過ぎて私のアパートの前まで辿り着いた。ミヒャエルはあたかもそこが自分の家のように鍵を開けるが、そこは間違いなく私のアパートで、無遠慮に部屋の中に侵入し私を押し込むと鍵をかける。
「ミヒャエル、あの……私」
靴を脱ぐ前に狭い玄関の壁に追いやられて、彼の動きが止まったような気がした。一瞬、説明する猶予を与えられたのだと思った。
けれど、どれもこれも頭に浮かぶのは言い訳にしかならなくて、私は言葉にできずまごついていると、痺れを切らしたミヒャエルに唇を塞がれた。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします!(?)完結おつかれさまです!これからもおうえんしてます! (2023年4月3日 22時) (レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました!ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです!!完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました!また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます! 改めてお疲れ様でした! (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年2月11日 16時