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男は「ならいい」と言って腕を引いてくる。多少強引だが、今はその扱いをされることが不思議と嬉しいような気がした。
そのまま人影の少ない路地裏に出る。どこに向かっているのか分からないけれど、抵抗する気力もなかった。夢現になりながら彼の後を付いていると、やがて、爛々と輝く街の明かりが視界から消え始め、建物自体が眠っているような薄暗い街並みへと変わってゆく。そこには、若いカップルであったり、時には娘と父くらい歳の離れた男女の姿であったり、限って男女の二人組が増えたような気がして、ハッとして彼を見上げた。
「男にでも振られたのか？」
「え……？」
「クソ分かりやすく顔に書いてあるぞ」
男の笑みが深まると同時に、逞しい腕が腰に回った。ゴツゴツとした骨張った感触が、男の人であるということを忽ち意識させる。ゴクリ、と私の喉が鳴った。
「でも、俺はその男に感謝してやってもいい」
耳元で男の低い声が、甘く囁く。腰に回された手がお腹に回る。私は息が出来なくなりそうになって、苦しくて、彼の腕に縋るように凭れかかった。
「俺とお前を、こうして引き合わせてくれたことにな」
＊
______やってしまった。
目が覚めると、隣には私よりも幾分も大きな影がもぞもぞと動いている。当然のことながら互いに衣服は身につけておらず、生まれたばかりの姿をした私たちは、それはもう事後であることを物語っていた。
男の人の匂い、男の人の体温。それら全てが恋しかった昨晩の私は、目の前にいる男を気付けば求めてしまっていた。
なんて、取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。振られたせいで酔いに酔っ払い、寂しさを埋める為と言い訳が出来るなら良いが、男の纏う雰囲気とその美形に完全に呑まれてしまった。
改めて男の寝顔をまじまじと見つめると、眠っていてもはっきりと分かるほど端正な顔立ちをしている。伏せられた睫毛は長く伸び、白く透き通るような艶肌に、鼻梁の伸びた鼻筋、そして、上半身に彫られた青薔薇の刺青が彼の美の全てを統合して表しているようだった。
「朝からクソ熱い視線だな、子猫」
「あっ、す、すみません……！」
「いや、お前なら許してやる。なんなら、もっと近くに来い」
てっきり、彼がまだ夢の中にいるのだと思い込んでいたので油断していた。ふいに腕を引かれて、私は倒れるように厚い胸板にすっぽりと収まった。筋骨逞しい腕に抱き締められると、それだけで私は何も言うことが出来なくなる。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします！（？）完結おつかれさまです！これからもおうえんしてます！ (2023年4月3日 22時) (
レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます！また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました！ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです！！完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました！また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます！ 改めてお疲れ様でした！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄泉
| 作成日時：2023年2月11日 16時
