壱 ページ2
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「社長は如何してこんな私をスカウトしたんでしょうか。能力的に私はポートマフィアに入るべきだろうに。」
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日記帳をペラペラと捲り乍谷崎君に問う。私の質問に対して彼は苦笑いして『僕はちょっと判りませんね』と云う。
今でも不思議に思う。何であの時に、異能力を遣うのが愉しくて愉しくて、最早“狂人”になりかけていた私に手を差しのべたのか。日記帳を増やすのに必死だった私を__
「Aさん?大丈夫ですか?」
「ッごめん昔の事思い出した、、」
過呼吸になっていたのだろうか。息が苦しかった。私は二回咳払いをして珈琲を飲む。過去何て如何でもいい。過ぎたことを思い出しても、如何せ全て思い出せないから。
谷崎君は日記帳が気になるのか、何回も日記を眺めている。個人の幸せしか載っていない日記は、正直好きじゃない。でも命と引き換えだと思うと、如何しても覗きたくなる。同じ様な内容でも、その時の感情、一人一人の人生の大半が書かれていて、中々詰まらないものでもない。何せ同じものは存在しないから。
「日記が気になるの?」谷崎君の顔を覗き込んで微笑する。「読む?谷崎君が気に入りそうなのもあるけど。」
「えッ……なら見せてもらッても良いですか…?」
その言葉を聞いて『よし来た!』と云わんばかりの勢いで席を立つ。日記を見て不快に思うことは無いだろう。
幸せしか書かれていないから。
「よし!探偵社に戻ろうか!」
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「んーと、あ、此がいい。」日記が入った箱を軽く漁り、三冊の日記帳を渡す。「はい此、私が一番嫌いなタイプの日記。適当に読んでね。」
「嫌いッてAさん…」
「だって世界一詰まらないから。でも“普通の人”なら気に入るよ。絶対。」
谷崎君は渋々受け取り、席に着いて日記を開き読み始める。
日記の数は人によって数が違う。数頁しかないものや十冊以上のもの迄。詰まらないのや面白いのも、そう感じるのは人各々だが。
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「まぁ、きっと“良い日記だ”って云うと思うんだけどね。」
ラッキーカラー
あずきいろ
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作者名:Utsuro x他1人 | 作成日時:2017年8月29日 17時