狐と兎 3

若いっていいな… ページ29

そのあとは自分でも分かんないケド野宿をし た。

何故かって？

それがさ〜あの川原沿いを歩いていたら…

グラサンをかけたおじさんが川に飛び込もうと

していたから助けたんだけど──。

〜 遡ること二時間前〜

(A)なんで川に飛び込もうとしたんですか？

(グラサン)いや〜川に10円落としちまってさぁ〜。

(A)なんか木こりの湖みたいな話ですね……。

(グラサン)なんだ木こりの湖って？

(A)知らないんですか？

木こりが池に自分がいつも使っている斧を落としてしまうんです。

そのとき池の中から女神が出てくるんです。

「貴方が落としたのはこの金の斧ですか？それともこの銀の斧ですか？それともこの古びた斧ですか？」

するとその木こりはこう答えます。

『いいえ女神様、私が落としたのはその古びた斧です。』

すると女神は───…

「貴方は大変正直者です。ご褒美にこの金と銀の斧をあげましょう。』

「ありがとうございます！」

木こりは女神が池の中まで消えて行くのを眺めていましたとさ。

めでたしめでたし。

─という話なんですよ。

(グラサン)ほぉ〜つまりその木こりは正直者だったんだな。

(A)ま、そうですね。

でも川に飛び込もうなんて絶対しないでくださいよ。

(グラサン)いや〜悪い悪い。

(A)…あ、10円ぐらいなら…

私はポケットから財布を出し、その中から10円を取り出しグラサンのおじさんに渡した。

(グラサン)いいのかよ！

(A)別にこれぐらいなら…でも金蔓にはしないでくださいよ。

(グラサン)分かってるって。

あ、俺、長谷川って言うんだ。

(A)私は狐月 Aといいます。

(長谷川)Aちゃんっていうのか。

(A)はい。

…で、長谷川さん、ちょっとお願いがあるんですが……。

(長谷川)おう！なんだ？

(A)私、今日、泊まるとこなくって…どこか泊まる所知っていませんか？

(長谷川)すまねぇなAちゃん。

俺も泊まるとこないんだわ〜。

(A)じゃあ長谷川さんは何処で寝泊まりしているんですか？

(長谷川)俺はこれだ。

長谷川さんが 私の前に出してきたのは段ボールだった。

その瞬間私は何故か…

段ボールぅぅぅ！なんか楽しそう！

(長谷川)え？

(A)それでいいです！

それでいいです！

(長谷川)そ、そうか？

(A)では、寝まぁす〜。

THE night

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