実.況してみた【実.況者】 (ページ24)

今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:19,500 hit

実況24 ページ24

午後6時、シフトが終わり只今塾へ向かっている途中の者です。

バスに揺られながら、イヤホンを通して聞こえる声に少しウトウトしながらも意識を必死に保つ。

「"ってか、これなに？"」(笑)
「"アッハッハッハッハッ"」(笑)

何方かのグループ実況を見ている、というか聴いているのだが甲高い笑い声に脳が少し冴える。
そうだ、今から塾だからこんなとこで寝てはいられないんだ。

そんなことを言い聞かせながら、伏せてあった画面に目をやり酔わぬようしばらく見ていた。

*

「Aさん、ここわかんないんですけど。」
「あぁ、それはね。ここをこうして、この前の公式覚えてる？」

中学生の少しお年頃な子を相手に数学を教える。おかしいな、確かこの子には宿題出してあったはずなんだけどな((

「宿題？俺すっかり忘れてたんで。」
「はぁ？もうちゃんとやっとかないと応用追いつかないじゃん。」

一瞬、心の声が悟られたかと思ったが声に出ていたのを思い出す。
この子のせいで少しストレス増える気がする。

子供の相手をするのは面倒じゃないが、この子は非常に手がかかる。教えがいがあって楽しいが。

「はぁーい。ってかAさんどしたん？好きな人でも出来た？」
「…っはぁ？」

唐突な質問に子供を思いっきり見る。多分今の私は少し焦っているだろうが彼に伝わらないようにする。

「子供は大人の事情なんか知らなくていいの。今は勉強に専念しなよ、受験生でしょ？」
「ちぇっ。でもAさん可愛いから気抜くと襲われちゃいそう。」

ププと口元を抑えながら嘲笑っている彼に少し活を入れたくなるも抑える。
大人げないことをしない、気持ちの高ぶりは返って仇となる。

「ありがたいけど、お世辞は結構。生憎お仕事一筋なの。」
「なぁーんだ、つまんないの。」

そうぼやいて、また机上に向かい始めた彼に弄ばれた気分だった。

こんなことを心の奥底にしまっておいているのも自分に嘘をついているだけ。

わかっている。

けど、淡い期待は後悔が大きくなるだけ。

キヨさんの事、今でも当てはめてしまっている自分がいた。

帰ったら電話して、動画見よう。そうやってまた何か話す口実を作っていた