【ヒプマイ】営業先の人【観音坂独歩】

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｢……うぇ｣


車をアパートの前に止めてもらって相変わらずボロい自分の部屋の前に来た


初めは独歩の家に劣りすぎる自分のアパートがちょっと恥ずかしくてオドオドしてたけどそれも今の出来事で覚めた


ドアを開けようとドアノブを握ると濡れていた



｢……汚ったない｣


｢……俺が行く｣



自分の手のひらを見てみるとただ濡れていただけではなくて透明だけどちょっと粘り気のある……

唾液？


そんな私をそうろと押しのけてハンカチ越しにドアノブを握った独歩は躊躇いもなく鍵のかかってなかったドアを開けた



｢う……わぁ｣



玄関には下駄箱から引きずり出された私の靴が全部散乱していて奥に続く廊下に向けて黒い足跡が残ってた


充満した生臭い匂いに何が行われたかまではっきりわかった



ここまで好かれることなんてもう人生でない経験だ



……気持ち悪いけど



｢大丈夫？｣


｢余裕……多分｣



流石にこの様子に心配になってくれた独歩は優しく手を握ってくれた


玄関をみてやっぱりちょっと引いて少し気分が悪くなって口に手を当てた




｢ここで待っててください｣



入間さんは私と独歩を遮って部屋の中に入ろうとした



｢……いや｣



その腕をつかむと入間さんは驚いて振り返った



｢私も行きます、私の事なんで｣


｢……｣



少しの間が空いてじっと私の顔を見てた入間さんは眼鏡をかけ直した


そうかと思えば表情が少し緩んで少し鼻で笑った




｢変わりませんねぇ｣


｢……へ？｣


｢行きましょう｣




手のひらから離れた腕が廊下を静かに進んでいった


……変わりませんねぇ？……どういうこと？？




｢……行かないのか？｣


｢あ……いや｣



少し考えてボーッとしてしまった



｢……静かにね｣


唇に人差し指を当てて独歩に合図を送って独歩の手をぎゅっとまた握って覚悟を決めそのあとを付いて行った


物音を立てると相手が警戒してしまうから、静かにゆっくり物音を立てないようにって……小さい時に




……誰かに聞いたな、父親じゃない


父親よりも可愛がってくれた……まあいいや





｢……入間さん｣


少し進むと洗面とか風呂とか集まってる部屋のドアの前で入間さんに追いついた


ドアの横壁に張り付いて中の様子を伺ってる入間さんは険しい顔かと思えば優しい顔で人差し指を唇に当てた



……あ



この仕草と、お腹の前に差し出された止まれの合図の手と中を伺う入間さんの首筋にデジャブを感じた

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