【ヒプマイ】営業先の人【観音坂独歩】

独 ページ22

まつ毛なんて嘘に決まってんだろ


彼女は少し騙されやすい



……嘘だ全部



窓の外しか見れなくて、ずっと窓の外みて


守れる自信もないし、俺なんかが釣り合うはずもないAの手をなんとなく握ったままで


切なく｢こんな私に……｣だって




当たり前だろ……俺が何年ずっと心配してくれるAを見てきたと思うんだ？



ついてきてなんて、こんな俺に付いてきてもらってどうするんだよ





……ぶっちゃけ、耐えられなくていっそここでキスして俺のものにしてしまおうとした





ストーカーに取られてAがめちゃくちゃにされてしまうのは嫌だからちょっ早まったらしい



ていうか絡めた指も拒まれなくて、ずっと焦らしてくるAが悪い




俺の中ではまだ真っ白なAが俺以外の色に汚れるなんて考えてられない



今すぐその隙だらけのAをどっぷり俺に浸からせてしまいたいのに……



｢……｣



何考えてんだ……



反対側の窓の外を眺めてるAをみて冷静に……



なれない


ハーフアップの柔らかい髪が鎖骨にかかってそれだけでしんどいのに


あと、どれぐらい耐えることができるだろう



｢……独歩、ついた｣



Aは止まった車に柔らかい手の感触がなくなって鞄をゴソゴソあさって


革製の薄いピンク色の財布を取り出した


ああ会計……



｢……まって｣


お札を抜き取ろうとするAの手より先に自分の財布から料金を取り出した



｢出てて｣




開いたドアから困惑したAを先に出させて運転手に領収書をもらった



｢かわいい彼女さんですね｣




ニコニコした運転手はからかうように言った




｢彼女じゃないんです……まだ｣



ちょっとした苦笑いがこぼれて

それだけ言うとタクシーから出た



外の空気が新鮮で、目の前に建つ少し古いけど大きい警察署に紙袋とAの手をとって入っていった




｢……いこ｣


｢……行く｣




……今日、金曜だからあの人多分こっちまで出てきてるはず



正面玄関の前の警備の人になんとなく一礼して自動ドアをくぐった



気持ち控えめに周りを見るとやっぱり見たことある背中が自販機の前に立ってた



タイミングまであったのは初めてだ



｢……ヨコハマの職質の人｣



話しかけると振り向いたその人はやっぱり見たことのある顔だ



メガネの切れ目で細身の職質の人……



｢……あ、シンジュクの｣


缶コーヒーを空けて俺とAを交互に見た彼は少しニヤリとした

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