【ヒプマイ】営業先の人【観音坂独歩】

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｢え、ぇ〜…………｣


さっきより強く独歩の手を握って走る車窓の外を見た


流れる人々の平凡さから安心を自分に植え込んでさっき聞かされた言葉でたった恐怖心を抑えもうとした



｢ぇ〜…………｣



かすかに聞こえそうなぐらいの小さな声がずっと漏れて止まらない



｢……A｣


｢……なに？｣




窓の外から目線を独歩に移した


独歩も私と同じで窓の外を眺めてた




｢俺が……いる｣



ずっと握られた手の温かさだけ感じられて向こう向いてる独歩の顔色は感じられなかった



けど、


けど限りなく暖かい




｢……おう｣


出てきてた恐怖心はまた一気に取り除かれて心を独歩で埋めつくされた



付き合ってるわけじゃないのに、ほんとう付き合ってるみたい



……この距離感が好きだったりする




でも……



｢……あのさ、｣




意を決して話しかけると同時に手が離された


そのまま間も問わずまた触れられた


今度は指の間に独歩のゴツゴツした指が入ってきた



｢……なに？｣


｢何でもない｣



完全に疲れきった顔のくせに一丁前にかっこいい独歩が久しぶりにこっちに向いた



やっぱりこのなんとも言えない距離感が好き




もう少しこのままでいたい……かななんて




｢……拒まねぇのかよ｣



また窓の方に向いた独歩は何やらぼそっと呟いて


でも私には聞き取れなかった




｢……ありがとう｣



聞き取れなくても会話は何となく続けたい


そんな気持ちだけじゃないけどいろんな気持ちが溢れたありがとうが自然に出た



｢……こんな私にここまでしてくれて｣



｢A｣


窓の外はそろそほ新宿警察署に近づいてきた


独歩が呼んだから振り向くと手から温もりがなくなって、その代わり独歩が近づいた




｢……え｣



びっくりしてあんまり可愛くない声が出て後悔に駆られた


餌もらう前のアシカかトドみたいな声



｢Aはこれからずっと俺についてきて｣


手が顔に近づいてきてドキドキした


その時間のすべてがゆっくりに感じられて運転手さんが気を利かしてずっと黙っててくれるのがいきなり申し訳なくなってきた



｢……おう｣



警察署入ってからの行動について……かな



目の下を拭う親指に反射的に片目を閉じてもう片方でじっと独歩を見つめた


……クマが相変わらずひどい



｢……とれた｣



手が離れると同時に独歩も離れた



｢まつ毛ついてた｣

｢……ありがと｣



思ったよりもしらけた

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