ハート ページ15
*
「A!!」
ゴミになった折り紙を捨てようとすると聞こえるはずのない大好きな人の声。
「く、にみ?」
思わず振り返ると彼は本当にそこにいて。
「どうしたの、そんなに走って。」
「…なに、捨てようとしてんの?」
彼は私の問いに答えることなく私の元まで来た。
「なにって…ただのゴミだよ」
手に持っている赤を隠すように握りしめ、背中に隠す。
「これ、さっき気がついた。」
「!!」
カサっと取り出されたのはいつか国見にあげた折り紙。
気づいてしまった、気づかれてしまった。
「そんなゴミ、まだ持ってたの」
「ゴミじゃない」
「いつもゴミって言ってたの、国見じゃん!」
続く言葉が怖くて、強く言ってしまう。
振られるのが怖くて、耳を塞ぎたい。
今すぐここから逃げ出したい。
「ねぇ、まだ気持ち変わってない?」
ボロボロと涙がこぼれる。
頷くことも、首を横に振ることも出来ず、ただ涙を流す。
スっと手を取られ、握っていた折り紙をスルりと抜かれる。
「ずっと、国見が好きだった。今もずっと。」
声が震えて、ちゃんと言葉になっているかも怪しい。
「俺も、同じ気持ちだよ。」
国見の口から信じ難い言葉が出てきて思わず顔を上げる。
「うそ、私の事、うるさいって、しつこいって…」
私の今の顔は涙で相当酷いと思う。
「最初はそう思ってた。でも俺、Aが笑ってないと嫌みたい」
そう言って笑って私を抱き寄せる。
さっきとは打って変わって幸せで涙があふれる。
「願い、叶った。」
「俺に名前で呼ばれるってやつ?」
国見も覚えてくれていたのが嬉しい。
「うん、それもだけど…。
あの星、国見と付き合いたいって書いてたの。」
「流れ星、効果あったね。」
カサっと広げられるクシャクシャの赤はハートの形に戻る。
「ぐしゃぐしゃだし捨てて!もうゴミだよ、それ」
恥ずかしくなり、国見の手から奪おうとするも躱される。
「ゴミじゃない。最高のラブレターだろ」
31人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏斗 - 凄くドキドキして最高でした。こんな素敵な作品をありがとうございました。 (3月31日 3時) (レス) @page16 id: 73bfbf52f2 (このIDを非表示/違反報告)
名無し78716号(プロフ) - ほんとに素晴らしい作品でした…ありがとうございます (3月2日 23時) (レス) @page16 id: aab997e352 (このIDを非表示/違反報告)
とーうえ れーと - ありがとうございます。 (3月1日 21時) (レス) @page16 id: 52d6184189 (このIDを非表示/違反報告)
美園(プロフ) - 最高によかったです (2月28日 9時) (レス) @page16 id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:李雨*無気力なう。 | 作成日時:2024年2月28日 0時