コイイロパレット。【オリジナル】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:4,298 hit

white26 ページ26

30分くらい作業をしていると、美緒がトイレに行くと言って一旦資料室から出た。

美緒がいなくなったため、しんと静まる。すると突然先生が私の方を向いた。

「ねぇ、椎名さん」

パチンパチン、とホチキスで止めながら私は、何ですか、と返事をする。

「池崎さんと全然話さないけど、何かあった？」

「何もないです」

「けど、やけに二人とも喋らないよね」

何だ、先生気付いていたんだ。

一旦手を止めて先生の方を向くと、視線がぶつかった。何故か、何とも言い表せないような思いが湧き上がって来た。

「本当に、何もないです。だから、私も違和感感じてたんですけど」

「そうなんだ」

「一緒に登校した時は普通だったけど、学校ですれ違ったり目が合うと顔を背けられたりして」

「……そっか。じゃあさ、池崎さんが戻ってきたらオレ一旦職員室に行くから、その間聞いてみる？」

「……じゃあ、そうします」

私がそう答えると、先生が微笑む。それを見ただけなのに、何故かドクン、と心臓が大きく音を立てた。

「？」

いきなり私、どうしたんだろう。まさか、あの時殴られたせいでおかしくなった？

すぅ、はぁ、と深呼吸をすると鼓動が落ち着いてきた。

作業に戻ると、もう終わったらしい先生の声が頭上から聞こえる。

「椎名さん、髪顔にかかって邪魔じゃない？」

「邪魔ですね」

「結んだら？」

「朝はギリギリまで寝てるので、時間がないというか」

「髪結んだのも、似合うと思うよ」

先生の手が私の髪に触れて、ホチキスで資料を止めていた私の手が一瞬止まった。

髪を撫でられていて、いつ顔を上げれば良いのか分からない。いや、いつ上げても良いと思うんだけど。

顔を上げられない。今、先生と顔を合わせづらい。

「先生、あの」

私がそう言いかけた瞬間、ガラガラ、と扉が開いて美緒が戻ってきた。

「っ、じゃあオレ、一旦職員室に行ってくるね」

先生は慌てて私から手を引っ込めて、資料室から出た。

「何、してたの？」

美緒が口を開いた。

だから私も顔を上げて美緒の目を見た。

「その前に私も聞きたいことあるんだけど」

「……」

「私の気のせいだったら別にいいんだけど、美緒、わざと目そらしたり顔背けたりしてたよね。昼休みも、何も言わなかったし。それは何で？」

私が聞くと、美緒の目に涙が浮かんだ。

「だ、だって……！」

美緒の声は震えていたけど、そのまま話を続けた。私は黙って、美緒の話を聞く。