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そして放課後。
いつもなら汐崎と一緒に弓道場へ行くはずだけど、授業に出なかった罰として資料制作を手伝うことになってしまった。
「椎名、ちゃんと資料室に行って手伝えよ。もしサボったら、1週間部活禁止にするからな」
「……」
担任からそう言われ、仕方なく資料室へ向かった。
足取りが重いのが自分でも分かる。放課後の部活の時間を楽しみにしていたのに、その時間が雑用に代わってしまったから、正直行きたくない。
早く終わって部活に参加できると良いけど。
「失礼しま……!」
資料室へ入り、そこにいる人を見た瞬間、私は一瞬固まった。
そこにいるのは、美緒と成瀬先生だった。何でこの二人が……?
先生は私の方を向いたけど、美緒は下を向いたまま私と目を合わせようとしない。
「あ、椎名さん。遅かったね」
「普通です」
私は答えながら、二人から離れた場所にある空いている席に座る。資料がいくつかの束になっているから、きっとこれを1枚ずつ重ねてホチキスで止めれば良いんだと思う。
「これ、全部止めればいいんですか?」
「うん。100枚あるんだけど、下校時刻までに終わらせてね」
「……はぁ」
とりあえず今は美緒の事は置いておいて、これを終わらせることを考えよう。
そう思って黙々と私は作業に取り組みはじめた。
「先生、疲れたぁ。少し休んでいいですか?」
「いいよ。池崎さん、けっこう進んでるから」
「授業サボっちゃって罰があるのは嫌だったけど、先生と一緒だから嬉しい!」
美緒と先生の声、私がホチキスを止める音だけが室内に響く。
チラリと二人の方を見ると、美緒は嬉しそうな顔で喋っていて、先生は返事に困っているように美緒から目をそらしていた。
「し、椎名さんは疲れてない?」
先生が話をそらすように私に声をかけた。分かりやすすぎる。
「私、さっき始めたばかりだから大丈夫です」
「そっか……」
パチン、パチン、とどんどん止めていく。
「先生、私高校で初めてマネージャーやってるんですけど、どうですか!ちゃんとできてますか?」
「うん。仕事もしっかりしてるし、今までマネージャーいなかったから助かってるよ」
「へへ、やったぁ。私、クラスでも部活でも先生と一緒で楽しいです!」
こんな事をストレートに言えるのは、美緒くらいだろうと思う。好意があるってことがバレバレなくらい。
「ありがとう」
先生はそう返しただけだった。
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めぐむ(プロフ) - Sakuraさん» Sakura,読んでくれてありがとう! (2017年12月28日 10時) (レス) id: b32ef37eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Sakura(プロフ) - 可愛いお話(*^^*) (2017年12月27日 18時) (レス) id: 085712002d (このIDを非表示/違反報告)
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