コイイロパレット。【オリジナル】 (ページ13)

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ガラガラ……。

「！」

扉を開けた瞬間、中から腕を引かれてその人は素早く扉を閉める。

驚いた。急に腕を引かれるなんて。

「ごめんね。最近、他の生徒にこの部屋にいることがバレそうで、また椎名さんが来たらどうしようかと……」

「……来ちゃいましたけど。迷惑なら、戻ります」

「いや、そういう事じゃなくて！もし椎名さんがここに入ったところを誰かに見られたら、大変だなって」

先生が慌ててそう言って、思い出したように掴んでいた私の腕を離す。

何で名前知ってるんだろう、って疑問が浮かんだけど、そういえば美緒が私の事を話していたんだ。

「私の事なら大丈夫です。他の女の子に目つけられるくらい、慣れてるし」

「……それでもオレは、自分の事で椎名さんが何か言われるのは、嫌だから」

女の子人気な先生。それは平山と同じ。だけど、平山と違うのは、こういうところだ、と思った。

「じゃあ、もう来ちゃダメですか」

「ダメっていうか、来ないで安全な所にいてくれた方が助かるんだけど」

「……てか私、クラスの女の子たちから目つけられてるので、ここしか安全な所ないんですけど」

サラっと私が言うと、先生が、はぁ、とため息を吐いた。

「朝だけなら、居てもいいよ。でも、来るときは気をつけてね」

「……ありがとう、ございます」

そう言ってから、気付いた。

「そういえば、登校してきたとき、何か言ってませんでしたか？」

「！あー……うん、言ってた」

先生が申し訳なさそうに、私の目を見る。

「『ごめん』って言ってたように見えましたけど」

「……昨日、出勤時間ずらすって言ったのに、いつも通り、来ちゃったから」

「いや、確かにうるさいですけど、私に害はないのでずらさなくても大丈夫、です」

「……」

「それに、先生があの時間に来てくれると、美緒が毎日早起きしてくれて助かります」

私の言葉に、先生が困ったように笑った。

「池崎さんか。オレのところに来ると、椎名さんの話ばかりするよ」

「私には、先生の話ばかりしますけど。ていうか、美緒、私の事何言ってたんですか？」

私が聞くと、先生が私から視線を外した。

「『Aは私に何も話してくれないから、先生も気にしててください』って。池崎さん、良い人だよね」

「……」

何も話さないわけじゃない。話せないんだよ。

美緒が優しいからそう言うのは分かってる。だけどこんな事、美緒に分かってもらえるわけない。