中原の覇王 part5 (ページ7)

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168話ページ7

田光は荊軻を只者ではないと思い、賓客として遇した

田光は自宅へ帰ると、背をかがめ歩いて荊軻のところへ行った

光「荊軻よ。私と貴殿が親密なことは、燕では皆知っておる。今さっき、太子様が私に「燕と秦は並び立ちません。どうか先生の策をお聞かせください」と仰られた。私は「もう駄馬になりました」と申し上げたのだ。貴殿とは遠慮のない仲ゆえ、貴殿のことを太子様に推薦した。どうか太子様の邸に上がって貰えまいか？」

荊「先生のお言葉どおりにいたします」

光「荊軻は"長者は人に疑いを抱かせぬ"という言葉を知っておろう。先ほど太子様は私に「これは国家の大事。他言なさらぬように」と仰られた…これは太子様が私を疑っておいでだということだ。人に疑いを抱かせるようでは、義侠の名が廃る…貴殿は急いで太子様の下へ行き、"田光は自害し、他言いたさぬ証としました"と伝えてくれ」

荊「先生！？」

言い終わると田光は首をかき切って死んだ

荊軻は丹に会いに行った

荊軻は丹と会うと、田光の死と最期の言葉を伝えた

丹は涙を流し、しばらくしてからやっと口を開いた

丹「私が田先生に"口外しないように"と念を押してしまったのは、大事を成功させたいという心からだったのに…命と引き換えにして他言せぬ証とされたのは、私の本意ではなかった…」

荊「(大丈夫か？こんな男で…)」

荊軻は丹に軽く失望した

荊軻が座に着くと、丹は席を外して床に頭をつけて敬礼して言った

丹「秦王は大きな野心を抱いており、その貪欲ぶりは留まるところを知りません！韓王は虜となって韓は滅亡し、龍虎将の蒙武と騰は南の楚と魏を攻撃し、北は趙を攻めています。龍虎将の王翦は数十万の兵を率いて閼与を攻め下し、秦王は長城を陥落させ、拓跋Aも三大天を寝返らせ、公子嘉の軍を皆殺しにして、宜安を潰したとの事です。趙の滅亡は時間の問題です！」

荊「…」

丹「そうなれば、次は燕か魏です。燕は弱小国でして、秦に太刀打ち出来ません。また合従を唱える国さえも無いのです」

荊「成程…」

丹「私の考えを申します。天下第一の勇士が使者として秦へ行き、大きな利益をちらつかせれば秦王は貪欲故、必ずこちらの思う壺に嵌りましょう。そこで秦王を刺殺して国内に混乱を起こし、その隙に諸侯で合従すれば、必ず秦を滅ぼせます！私にとって、この策を成就させることが、何よりの願いなのです！荊軻殿…どうかこの件引き受けては下さいませんか」