32,〜カラ松side〜 ページ35
彼女が誰かを確認する必要もなかった。
彼女は、Aだ。
俺が間違えるはずはない。
すぐさま駆け寄って脈と傷口を確認する
そして、何度か名前を呼んだか、
苦しそうに眉を潜めるAには届いていないのかもしれない。
俺は、傷のひどい腹部を止血するために来ていたジャケットを破り、
トド松に持たされていたハンカチで傷口を抑え、縛った。
気を失ったのか、なんの反応も示さなくなったA。
止血をしながら携帯を手に取り、通話を始める。
何度かのコールの後、チョロ松の声が聞こえた。
「もしもし、カラ松か?」
少し緊張したような口調で一瞬説明をためらったが、簡単に説明をすると焦ったようだったが、なっとくしたようだった。
「すぐに補助に向かう。
それまでなんとかもたせてくれよ」
そう言うと、プツンと通話は途切れた。
一応、簡単な手当ての方法は心得ているつもりだが、Aのこの怪我は本格的な手術等を要することは、なんとなく察しがつく。
俺達の中で一番医療知識があるのはチョロ松だ。
以前、大怪我をした十四松の怪我を直したのもチョロ松だ。
チョロ松に任せれば恐らくAは助かるだろう。
でも、ここから俺たちのアジトまではかなりの距離がある。
もし、間に合わなかったら。
そう考えると自然と止血をしていた手が震える。
一旦止血を中断して、自分を落ち着かせる。
大丈夫。大丈夫だ、Aはきっと大丈夫。
チョロ松が来れば、ほぼ確実にAは助かるんだ。
だから、ここは俺が何とかしなくては。
そう、自分になんども言い聞かせ、手の震えは止まった。
止血はなんとか終えたが、まだ腹部の傷からは血がとめどなく溢れてきていた。
Aの手をにぎると、とても冷たかった。
このまま、Aが____。
背筋が凍るように冷たくなる。
「なんとか、頑張ってくれAっ…」
そう叫んだ声は、血まみれの廃工場の中で静かに飽和して消えた
雨はまだ止まない
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こたつ(プロフ) - 林檎さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて光栄です!更新はもう少々お待ち頂けると嬉しいです (2016年6月1日 15時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - この作品とても心にきておもわずないてしまいました (2016年5月31日 20時) (レス) id: 99a581fe59 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - エリカさん» コメントありがとうございます!テスト期間が終わり次第更新頑張ります!ありがとうございました! (2016年5月20日 1時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
エリカ - 更新頑張ってください! (2016年5月19日 23時) (レス) id: 516a27e0b4 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!自分の作品で泣いてくださる方がいるなんて…!恐縮です…。これからもぼちぼち頑張っていきます!ありがとうございました! (2016年3月24日 18時) (レス) id: d698e139af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたつ | 作成日時:2015年12月24日 0時