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23.〜カラ松side〜 ページ26

何度かのコールの後、
「もしもし…?カラ松か?」

と、聞き慣れた兄弟の声が電話越しに伝わってきた。

それに安心すると同時に早く事を伝えなければという焦りが入り乱れた

そして、結果的には
「Aが怪我をした」
と、とっさに口にしていた。

息を飲む音が聞こえる。
不安になる俺の胸の鼓動は、少しずつスピードを速める



「容体は…!?」

少しの間をおいて声がした。

その声にハッとしてモニターを振り返り、様子を確かめる。
Aはフラフラと部屋を歩き、救急箱を手に取っている最中だった。

そして、その時見えた腕の傷。

その傷は、目視だと浅い傷口に見える。が、未だに赤黒い血が溢れている


ドクドクと、緊張と焦りとが入り混じった不安で胸が痛い。
Aの様子を伝えようとするが、声が出なかった。


一度、深呼吸をし、冷静になれ、冷静になれと自己暗示をかけた

そして、今度は
「Aの左腕に怪我がある。
浅いようだが、まだ血が止まっていない。」

ゆっくりと、声が震えそうになるのを隠しながら伝えた。

「…そうか。それ以外に何か様子がおかしければ。
直ぐに報告してくれ。」

電話越しだが、少しだけ動揺しているように聞こえた弟の声に
ああ。と、短く返事を返し、通話を終了させた




だらん
と、携帯を耳にあてがっていた手が力を無くして垂れ下がる

近くにある小さなテーブルに携帯を置き、

ベッドに座り込んだ







すると、
ふとモニターの音声を伝えるスピーカーからAの声が聞こえた。









それは、泣き声で

驚いて顔をあげてモニターを見ると、
手当の途中に手で顔を覆い、声を抑えながら肩を震わせる妹の姿が目に入った





その姿は小さくて。


本当だったら俺たちが、俺が、守ってあげなければならない大切な妹


俺たちのおかした罪で、何の罪もない妹さえも巻き込んでしまっている。

何とも言えない罪意識と罪悪感で


思わずモニターから目を背けてしまった。



肩が震える。

モニターから聞こえる声は次第に大きくなる。

不意に、Aが泣きながら何かを口にした。




あまりよく聞こえなかった。





その悲痛な叫びを聞くことが辛くなって
思わず耳を塞いだ。









ああ、何て事をしているんだ俺は。



こうさせてしまったのは、俺たちなのに





逃げる資格なんてないのに



「ごめんな」

そう呟いた言葉は
狭く静かな部屋で砕けて溶けた

24.→←22.チョロ松side〜



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こたつ(プロフ) - 林檎さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて光栄です!更新はもう少々お待ち頂けると嬉しいです (2016年6月1日 15時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - この作品とても心にきておもわずないてしまいました (2016年5月31日 20時) (レス) id: 99a581fe59 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - エリカさん» コメントありがとうございます!テスト期間が終わり次第更新頑張ります!ありがとうございました! (2016年5月20日 1時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
エリカ - 更新頑張ってください! (2016年5月19日 23時) (レス) id: 516a27e0b4 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!自分の作品で泣いてくださる方がいるなんて…!恐縮です…。これからもぼちぼち頑張っていきます!ありがとうございました! (2016年3月24日 18時) (レス) id: d698e139af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こたつ | 作成日時:2015年12月24日 0時

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