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22.チョロ松side〜 ページ25

「Aが怪我をした」

いつも取り乱す事の少ない兄の必死な声。
僕は、その言葉に息を飲む。

「ッ……!容体は……?」

ここで取り乱しても仕方がないと、何とか自分を落ち着かせ、ゆっくりと様子を尋ねる

隣で心配そうに見つめるトド松が目に入った





「…そうか。それ以外に何か様子がおかしければ。
直ぐに報告してくれ。」

通話終了のボタンを押すと同時に、ふぅ。
と、少しの安堵のため息が漏れる

「チョロ松兄さん、カラ松兄さん。なんだって?」

不安そうな色を隠せない瞳が僕の顔を覗いた。

「Aが負傷して帰ってきた。」

それだけ言うと、
「嘘っ…!なんで!?
誰にやられたの!?」

と、慌ただしく問われた。

「肩に少しのかすり傷だって。
命に別条はなさそうだし、大丈夫だよ。」

そう言って安心させようと優しく背中を叩いた。

それでも、納得できないように

「なんで、Aが怪我を…」

と、そんな疑問を口にした。


まぁ、そうだろう。
Aは強い。
そこらの男共になんて負けるはずがない。

仮に、Aより強い敵がいたとしても、
僕達が近づかせるはずはない。


つまり、考えられるとすれば
腕が鈍ったか、

心に迷いがあったか。

Aの腕が鈍るなんてことは到底考えられない。


それなら、やはり戦闘中の心の乱れか。


考えられる原因といえば。

「僕達の暗殺依頼か…?」


そう呟くと、トド松が目を丸くして此方を向いた。

「え、じゃあまさか…」

トド松の言いたいことが手に取るように分かった。




しかし、トド松も僕も、
その先を口にする事は無かった。






しばらく無言のまま。

午後3時を刺した時計はボーンボーンと、無機質な音でそれを報せた


「トド松。」

不意に、僕が言葉を発した。

「いつでも出れるように、用意しとけ」


僕がそう言うと、しばらく考えてから黙って頷いて部屋を出て行った。


僕は力が抜けたようにヘナヘナと、イスに座る。


胸が苦しい。

嫌な予感がする。

ざわざわと、自分の中の何かが訴えている。




ああ、どうしよう


助けて、__兄さん




そういえば、
前にも、Aが大けがをして帰ってきたな。
懐かしい。
あの頃は。まだちゃんと【フツウ】だったのに

【フツウ】の。
兄妹だったのに


不意に。チョロ松の頬を温かい何かが伝った。

23.〜カラ松side〜→←21.〜夢主side〜(過去話)



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こたつ(プロフ) - 林檎さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて光栄です!更新はもう少々お待ち頂けると嬉しいです (2016年6月1日 15時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - この作品とても心にきておもわずないてしまいました (2016年5月31日 20時) (レス) id: 99a581fe59 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - エリカさん» コメントありがとうございます!テスト期間が終わり次第更新頑張ります!ありがとうございました! (2016年5月20日 1時) (レス) id: 84292a694d (このIDを非表示/違反報告)
エリカ - 更新頑張ってください! (2016年5月19日 23時) (レス) id: 516a27e0b4 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - 黒猫さん» コメントありがとうございます!自分の作品で泣いてくださる方がいるなんて…!恐縮です…。これからもぼちぼち頑張っていきます!ありがとうございました! (2016年3月24日 18時) (レス) id: d698e139af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こたつ | 作成日時:2015年12月24日 0時

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